Wednesday, November 13, 2019 9:09 AM

アディダス、米独で工場閉鎖〜スニーカー生産はアジアへ

 スポーツ用品大手の独アディダスは、米国とドイツにあるスニーカー工場を閉鎖し、自動化された最先端の靴製造拠点をアジアに移す。欧米の消費者の近くで生産するという従来の方針を転換する。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、アディダスは「スピードファクトリー」と呼ぶ自社工場で開発された技術をベトナムと中国のサプライヤー2社に移転する。同社のスポーツシューズ売上高はナイキに次いで世界第2位。

 独アンスバッハと米アトランタ郊外にある工場はいずれもオープン後3年経っておらず、閉鎖の決定は、製造業雇用を先進国に戻すことの難しさをうかがわせる。アディダスはこの移転によって「既存の生産能力の有効活用と製品デザインの柔軟性の向上」が実現すると説明。広報担当者は、今回の決断は長引く米中貿易摩擦とは関係ないと話している。

 米独2工場の閉鎖により、2020年4月までにはスニーカー生産が中止され、合わせて約200人の雇用が失われる。

 アディダスは米国でシェアを伸ばす一方、本拠地の西欧ではここ数カ月で販売が鈍化していただけに、今回の決定は急激な方針転換といえる。

 アトランタ工場は16年に建設計画が発表され、17年末に生産を開始した。

 アディダスもナイキと同様、靴の生産の大部分をアジアの契約業者に委託している。ナイキ、アディダス、アンダーアーマーのスポーツウェア3大手は近年、各社の製造戦略を多様化させることを目的に、靴の自動生産技術に投資したりすでに試験を始めたりしている。ナイキは米国内では靴の生産を行っていない。アンダーアーマーは16年、本社があるメリーランド州ボルティモア近郊で自動生産と3D生産の試作用設備をオープンした。

 アンスバッハとアトランタ工場で生産されるスポーツ靴は、アディダスの年間生産量のほんの一部と考えられる。16年に同社はアンスバッハの年間生産数が約50万足、アトランタは約5万足という見込みを発表していた。同社のスポーツ靴の総生産量は3億足であり、2工場はいずれもその1%にも達していない。