Tuesday, March 03, 2020 9:24 AM

核不拡散体制、崖っぷち 米露の軍拡競争再燃

 【ニューヨーク共同=山口弦二】核兵器保有国を米国やロシアなど五大国に限定した核拡散防止条約(NPT)は5日、発効50年の節目を迎える。NPTは核兵器の拡散食い止めに重要な役割を果たしてきた。しかし、インドとパキスタンの保有を防げず、近年はトランプ政権が小型核兵器の配備に乗り出すなど米露の軍拡競争が再燃。北朝鮮やイランの核開発問題も解決の見通しがなく核不拡散体制は崖っぷちに立たされている。

 オバマ前政権の「核なき世界」の機運が大きく後退する中、4月27日にはニューヨークで5年に1度のNPT再検討会議が開幕。核軍縮に消極的な核保有国と、反発する非保有国の亀裂は深刻で、会議の「成功」は容易でない。被爆国の日本は保有国と非保有国の「橋渡し役」を目指すが、自国の安全保障を米の「核の傘」に依存した上で核廃絶を訴える矛盾を抱えたままだ。

 「過去50年、NPTは加盟国に集団安全保障の恩恵を与えてきた」。国連で軍縮担当上級代表を務める中満泉事務次長は2月下旬の国連安全保障理事会の会合で「今年の再検討会議が失敗すれば(保有国と非保有国の)分断を固定化しかねない」と警鐘を鳴らした。