Wednesday, August 12, 2020 10:41 AM

黒い雨、国と県・市が控訴 援護区域拡大視野に検証

 広島市への原爆投下直後に降った放射性物質を含んだ「黒い雨」を巡り、国の援護対象区域外にいた原告84人全員(死亡者含む)を被爆者と認めた広島地裁判決について、被告の広島県、広島市、訴訟に参加する厚生労働省は12日、控訴した。一方、加藤勝信厚労相は援護対象区域について「拡大も視野に入れ、検証を進めたい」と表明。同省は専門家らの組織を立ち上げて議論する方針。

 被爆75年の節目に高裁で裁判が継続するものの、40年以上前に指定された援護対象区域が広がる可能性が出てきた。原告団は同日、控訴は不当と抗議し、検証にも「結論の先延ばしだ」と批判した。厚労省幹部は幅広い分野の専門家で議論する必要性があるとし、結論の時期について「年度内は困難」と強調した。

 安倍晋三首相は控訴理由を「累次の最高裁判決とも異なることから、上訴審の判断を仰ぐこととした」と説明した。加藤氏も「十分な科学的知見に基づいたとは言えない判決」とした。一方で「対象者の高齢化が進んでいる。可能な限りの検証を行うよう事務方に指示した」と話した。データの蓄積があるとし「最新技術、例えばAI(人工知能)などを活用して分析する」と強調。検証結果が同じ被爆地の長崎にどう影響するかに関しては「まずは黒い雨の検証を進める」と述べるにとどめた。(共同)