Monday, July 08, 2024 7:12 AM

AI普及、ホワイトカラー「大失業時代」か
〜IMF、社会保障や税制の刷新検討を

 人工知能(AI)の普及は、機械化や自動化、ロボット導入といった、近代以降人類が経験してきた技術革新のどんな「波」よりもはるかに雇用を奪うのではないか…。そんな不安が頭をもたげている。国際通貨基金(IMF)は6月に公表したリポートで、主に未熟練のブルーカラーの職を奪ってきたこれまでの自動化とは異なり、AI導入では事務職や知識関連職種などホワイトカラーも脅威にさらされると指摘。各国政府に、社会保障の拡充や経済格差の一段の拡大を抑えるための税制を検討するよう促した。(時事通信社ワシントン支局 高岡秀一郎)



◇中間層が地盤沈下

 「スキルのミスマッチにより、失業期間が長期化し、失業給付金もより長期にわたって必要とされる可能性がある」。IMFのダブラノリス財政副局長はリポート公表に際して行った記者ブリーフィングで、AIが及ぼす影響に警戒感をあらわにした。

 ホワイトカラーが幅広く打撃を受け、しかも再就職先を確保するには一層高度なスキルが求められかねない。AIが生み出した新たな労働市場環境にあぶれたホワイトカラーがうまく対応できなければ、格差が一段と拡大し、中間層の地盤沈下に拍車がかかる恐れがある。

 AI環境が要求する高度スキルは、取得に時間を要しそうだ。また、万人が首尾よく取得できるとも限らない。ホワイトカラーはしばらく、より低い賃金水準に甘んじざるを得ないかもしれない。ダブラノリス氏は「これまでの給与と(再就職先の)新たな給与のギャップを埋めるため、ある種の賃金保険を検討する必要がある」と踏み込んだ。

 社会保障の拡充にも、ホワイトカラーがAI環境に適応するための職業訓練や能力開発にも、先立って必要なのはカネだ。ただ、AI普及がとりわけ進みそうな先進国の財政は、社会の高齢化や金利上昇でただでさえ圧迫されている。これら施策の財源を確保するためにも、さらには格差拡大を抑制するためにも、AI導入の恩恵を受けそうな企業に課税するしかなさそうだ。

 もっとも、AI投資そのものに対して課税し、技術革新の芽を摘んでしまうのは悪手だろう。IMFはAI課税について「設計が難しい上に、生産性の伸びを妨げるリスクを冒しかねない」と注意喚起した。