Thursday, November 19, 2020 9:17 AM

格差際立つ時代と共鳴 柳美里さん全米図書賞

 米国で最も権威ある文学賞の一つ、全米図書賞の翻訳文学部門に18日(日本時間19日)、柳美里さん(52)の「JR上野駅公園口」が選ばれた。高度経済成長から取り残されたホームレスの男性を描いた物語が、差別や格差、貧困の問題が際立つ新型コロナウイルスの時代と共鳴した格好だ。

 同作の主人公は、1964年の東京五輪の前年、福島県から東京へ出稼ぎに来た過去を持つ男性。社会の片隅で死んでいった家族やホームレスの仲間の思い出、間近に見た天皇の記憶、東日本大震災の被害を男性の視点で描き、経済成長にひた走った日本社会の矛盾を浮かび上がらせる。

 新型コロナの世界的な感染拡大を受け、主催団体はオンライン動画で受賞作を発表。歴代の黒人受賞者を紹介するなど、差別や格差を克服する意志を鮮明に示した。福島県南相馬市からオンライン記者会見に出席した柳さんは「特殊な地域の特殊な物語ではなく、端へ端へ追い詰められ、気が付けば死の淵に立っていた者を描いたつもりです」と話した。(共同)