Monday, April 05, 2021 10:01 AM

チャルマース工科大、構造部品になるバッテリー製造

 スウェーデンのチャルマース工科大学(CUT)の研究チームは、KTH王立工科大学と協力して従来の試作品の10倍の性能を発揮するストラクチュアルバッテリー(構造用電池)を製作した。

 CUTによると、このバッテリーは、電極、導体、耐荷重材料として機能するカーボンファイバーでできており、車やその他のテクノロジー向けの「massless(質量のない)」エネルギー貯蔵ソリューションと呼ばれている。重量エネルギー密度は24Wh/kgと現在入手可能な同等のリチウムイオン電池の約20%で、剛性は25ギガパスカル(GPa)。バッテリー電解質はKTHで開発された。

 現在の電気自動車(EV)用バッテリーは、車の重量の大部分を占めるにもかかわらず耐荷重機能を果たしていない。CUTの研究者は、この構造用バッテリーが電源でありながら車体構造の一部としても機能することを強調している。

 「質量がない」といわれるのは、バッテリーが耐荷重構造の一部になれば本質的にバッテリー自体の重量がほとんどなくなるためで、結果として車重も減少する。

 構造用電池の開発は2007年から試みられているが、最初の試みでは優れた電気的および機械的特性を備えた電池が作れないなどいくつかの障害が浮上した。最新の研究ではこうした課題が大幅に克服されている。

 新しい電池セルは、負極が炭素繊維で、正極がリチウム鉄リン酸塩でコーティングしたアルミ箔(はく)でできており、それらは電解質マトリックス内のグラスファイバー素材によって絶縁されている。CUTは現在、正極の耐荷重材料として使ったアルミ箔を炭素繊維に置き換えてさらに実験するため、スウェーデン国立宇宙委員会が資金提供する新しいプロジェクトに取り組んでいる。グラスファイバーの絶縁体(セパレーター)も、充電サイクルを高速化するために超薄型のバリエーションに置き換えられる。

 新しいプロジェクトは2年以内に完了する予定で、プロジェクトを率いるリーフ・アスプ氏は、次世代の構造用バッテリーはエネルギー密度が75Wh/kg、剛性は75GPaに達すると見ている。構造用バッテリーは民生品に応用される見込みだが、長期的にはEV、電動飛行機、人工衛星にも使われる可能性がある。