Tuesday, June 07, 2022 3:23 AM

サイバー保険料、ハッキング急増で大幅上昇

 保険会社らは2021年に、サイバーセキュリティー保険の料金を大幅に引き上げた。相次ぐ大規模サイバー攻撃や政府のセキュリティー強化措置によって保険需要が高まったためだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、保険業界の監視機関である全米保険監督官協会(National Association Of Insurance Commissioners=NAIC)に提出された情報にもとづけば、米国の大手保険会社らが2021年に契約者から直接受け取った元受保険料は前年比92%にも膨れ上がった。

 業界専門家たちによると、その激増は保険料上昇が主因で、保険会社らが保険対象を広げたわけではない。保険料上昇によって、米サイバー保険業界の直接損害率(収入に対して保険請求者に支払う保険金の割合)は、過去最高だった2020年の72.5%から2021年には65.4%に低下したが、2019年の47.1%を大幅に上回っている。

 業界幹部によると、比較的新しい市場が急速に成熟しつつある場合、市場の再編を反映して保険料が大幅に上がることがある。したがって、保険業界がサイバー保険の価格設定権をにぎりつつあることがうかがえる。

 カリフォルニアを拠点とする保険会社カウベル・サイバーのジャック・クデルCEOは、「サイバー保険の引き受けが増えたわりに市場環境は長年にわたって軟調だったが、サイバー保険料がようやく適正化されつつある」とみている。

 保険需要は、2021年5月に起きたコロニアル・パイプラインのハッキング被害によって加速した。同事件は、議会と政府によるサイバー犯罪対策強化に拍車をかけた。

 保険仲介会社CACスペシャルティーの上席副社長でプロフェッショナル・サイバーソリューション責任者のアダム・ラントリップ氏によると、2021年は保険料の値上げに加えて、多くの保険会社が保険の補償範囲を縮小した。その結果、非保険会社らは同じ補償額を維持するために、より多くの保険契約を締結し、より多くの書類を作成しなければならなくなった。

 CACでは現在、顧客が保険の契約更新に必要なすべての課題を解決するのに推定4〜6ヵ月かかる。

 そのほか、一部の保険会社では、ロシアによるウクライナ侵攻のような戦争行為の免責条項を明確化する動きも見せている。従来型の武力行為にデジタル攻撃が加わったことから、保険をめぐる法的係争になった場合に敗訴しないようにするためだ。

 プーチン戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)では、「非国家主体が行うサイバー攻撃によって、保険対象と非対象のあいだの法的にあいまいな部分が拡大する可能性がある」と専門家らは警告している。

https://www.wsj.com/articles/cyber-insurers-raise-rates-amid-a-surge-in-costly-hacks-11652866200?mod=tech_lead_pos11