Tuesday, November 29, 2022 5:20 AM

24M、工程簡素化でリチウムイオン電池の製造コスト削減

 電池の技術革新といえばまず新しい電池化学や材料の可能性が注目され、生産工程の重要性は見落とされがちだが、半固体リチウムイオン電池の製造技術を開発する24Mテクノロジーズ(24M Technologies、マサチューセッツ州)は最近、電池の製造コストを大幅に減らせる電池を設計した。

 同社のプレスリリースによると、「セミソリッド(SemiSolid)」と呼ばれる簡素な設計の半固体電池は、各セル(電池の単体)の製造に必要な材料と工程が少なく、粘着性のある電極を使うことで製造コストを最大40%削減できるほか、エネルギー密度や安全性、リサイクル性なども向上できる。既に住宅用蓄電システム向けに数百メガワット(MW)の出力規模で実証されており、次はギガワット(GW)規模で実証したい考え(太田直樹CEO)。

 大規模な生産ラインの構築は、24Mの計画の第一段階に過ぎない。24Mの電池設計のもう一つの特徴は、さまざまなリチウムイオン電池向け化学物質を組み合わせられる点にある。つまり、同社と協力する企業は、製造工程を大幅に変更することなくより良い性能の材料を組み込める。

 24Mが実現を目指す次世代電池の迅速な大量生産は、電気自動車(EV)のコストと性能に劇的な影響を与える可能性がある。太田氏は「これはプラットフォーム技術なので、顧客のサプライチェーン(供給網)を変えることなく、市場にあるどんな材料の組み合わせでも使える。今の当社は低コストで信頼性の高い事業者だが、次世代の電池化学でも競争力を発揮できる」と話している。

 従来のリチウムイオン電池は、不活性なプラスチックや金属の層で固体電極を電解液から分離し、電極を固定している。24Mの設計は、従来の電池の不活性物質を取り除き、粘着性のある電極混合物(電解液と正極材、負極材を混ぜた流動性物質)を採用することによって、これまでの電池生産で必要だった電極の乾燥・固化というエネルギーを大量消費する工程をなくし、アルミニウムや銅など高価な材料を含む従来の電池の不活性材料の80%以上が不要になる。さらに、24Mのデザインはバインダー(接着剤)を必要とせず、シート状の電極が厚いため電池のエネルギー密度を向上させられる。