Wednesday, November 09, 2016 4:42 PM

美術館の命名権売却で賛否 資金獲得も独立性に懸念

 京都市美術館の命名権を京セラ(京都市伏見区)が50年間、約50億円で買い取り、リニューアルオープン後の愛称が「京都市京セラ美術館」となることが決まった。「市民負担の軽減だ」「歴史ある施設に不適切」。大規模な公立美術館で2番目に完成した美術館だが、経営難を抱え、賛否両方の声にさらされている。

 市美術館は1933年に完成し、約3千点を所蔵、寄贈品が8割だ。老朽化が進み、市は約100億円で本館の耐震化や新館建設を計画したが、展覧会による収入は運営や管理費用に消え、市税で全額を賄うことも困難。寄付に応じる企業もなく、約50億円で命名権売却を決めた。

 これに対し、市議会では「企業名が入ると、競合する他社の共催する展示会が開かれなくなるだろう」と独立性への懸念が相次ぎ、美術関係者が市長宛てに出した意見書では「魅力が損なわれ、作品の寄贈が減る」との指摘も。市民団体や芸術家らは撤回を求める署名約2500人分も集めた。(共同)