Tuesday, October 31, 2023 6:45 AM
中国の黒鉛輸出規制で代替調達が加速へ
中国が電気自動車(EV)の主要材料であるグラファイト(黒鉛)の輸出規制強化を表明したことで、世界の鉱業関係者はEV向けの黒鉛を確保するため新しいプロジェクトの生産開始を急いでいる。
ロイターによると、中国商務省は10月20日、国家安全保障のため一部の黒鉛製品の輸出を許可制にすると発表した。黒鉛はほぼ全てのEV電池の負極材に使われており、中国は世界最大の生産・輸出国で、精製黒鉛では90%以上のシェアを握る。
自動車業界では、新型コロナウイルスのパンデミックを背景とする部品不足によって、材料を一国に過度に依存するリスクが明確になり、2025年ごろに予定されている次世代EVの発売に向けて供給を確保する動きが強まった。
自動車メーカーは、将来のEV電池の供給確保に向けて材料の採掘事業に投資しているが、鉱山開発には5〜10年かかり、ほとんどのプロジェクトはまだ生産に入っていない。このため少なくとも今後5年は中国が黒鉛供給の支配を続ける見通しとなっている。
今回の中国の動きはあらゆる業界を驚かせ、一部のエンドユーザーは規制強化が続くのではないかと懸念している。黒鉛製品の加工と販売を手がけるグラフェックス(Graphex、香港拠点)のグラフェン(炭素原子のシート状物質)部門社長、ジョン・デマイオ氏は、中国の動きは、自国内の黒鉛供給を緊急に改善する必要を強調するきっかけになると考えており「当社は中国以外で数社の黒鉛生産業者と連携している。このニュースで生産開始の動きが加速するだろう」と語った。
グラフェックス・グループは、24年末までにミシガン州ウォレンに黒鉛加工施設を開設する計画で、年間1万トン以上を米国の自動車メーカーに供給する予定だ。
マダガスカルで採掘・加工事業を行い、最近モザンビークで二つのプロジェクトを買収した英ティルパティ・グラファイト(Tirupati Graphite)のシシル・ポダール会長は「この輸入規制で黒鉛活動における脱中国の動きがさらに加速する」と見ている。