Friday, May 04, 2018 12:45 PM
「強いドル」想定より進まず トランプ氏のけん制一因か
日本や欧州の中央銀行が金融緩和政策の出口戦略に着手できない中、先進国の中では米国だけが緩やかな金融引き締め路線を続け、金利差を意識したドル買いが進んでいる。だが、2017年は大きくドル安が進行。18年に入って「強いドル」が復活しているものの、依然として対円では年初比で弱含んでいる。背景の一つには、保護主義的な通商政策を打ち出すトランプ政権によるドル高へのけん制もありそうだ。
ドルは16年11月の大統領選後に急進した。トランプ氏が掲げる大型減税と巨額のインフラ投資による積極財政で景気拡大とインフレが進むとの見方から、米長期金利に上昇圧力がかかったためだ。17年年初には、ドルが主要通貨に対して14年ぶりの高値を更新した。17年年初のドル円相場は、1ドル=118円台をつけた。その後、ドルは下落し、年末の相場は112円台だった。ユーロに対しては、17年初めの1ユーロ=1.04ドル台から年末は1・20ドル台まで値下がりした。保護主義的なトランプ米大統領が米国の輸出に不利なドル高を警戒しているとの見方からドルが売られた。
トランプ氏は17年1月、米紙のインタビューで「我々の通貨(ドル)は強すぎる」と述べた。ドル高に弾みがついた場合には「ドルを押し下げる」必要性が出てくる可能性を示唆した。その後、日銀の金融緩和について「通貨切り下げだ」と指摘し、円安誘導に当たると非難した。こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に追加利上げを決めた。日銀の金融緩和は続いており、円安ドル高に対するトランプ米大統領の不満は収まらない状況となった。ただその後は、トランプ氏の口先介入に加え、同氏を巡る一連のスキャンダル、貿易摩擦に対する懸念などを背景にドル安が進んだ。(共同)