Tuesday, November 26, 2019 9:11 AM

フラウンホーファー、EV電池用に薄膜電極を開発へ

 ドイツのフラウンホーファー材料・ビーム技術研究所(IWS)は、ドレスデン工科大学およびライプニッツ工科大学の研究者とともに、極薄のシリコンかリチウム層を使った新しいバッテリー電極の開発に取り組んでいる。

 フラウンホーファーによると、新しい電極の開発は3年間継続される「KasSiLi」プロジェクトの下で進められ、2022年までに機能実証実験を行う予定。KasSiLiはドイツ連邦教育研究省(BMBF)が支援するバッテリー材開発プロジェクト「ExcellBattMat」の一部。

 ExcellBattMat Centerの代表も務めているドレスデン工科大学のステファン・カスケル教授(化学)は「この新しい技術はドイツをビジネス拠点として大きく前進させる可能性を秘めている。われわれは最終的にドイツに近代的な電池製造施設を作りたいと考えており、そうすればeモリビティーや再生可能エネルギーへの移行で極東や米国への依存を軽減できる」と話している。

 現在、リチウムイオン電池の負極材は一般的に薄さ数マイクロメーター(1マイクロメーターは1000分の1ミリ)の銅導体で構成され、約100マイクロメーターの厚さのグラファイト(黒鉛)層で覆われている。共同プロジェクトでは、そのグラファイト層をはるかに薄いシリコンかリチウムの層に置き換え、厚みは約10〜30マイクロメーターにすることが目標。すでに研究室段階では非常にうまく機能し、高い蓄電能力が確認されている。

 現在のリチウムイオン電池の電力密度(単位体積または単位重量当たりの電力)は約240Wh/kgまたは最大670Wh/Lで、プロジェクトでは1000Wh/L以上の実現を目指す。

 薄いシリコンまたはリチウムで覆われた正負の電極は、バッテリーの充放電に伴い収縮と膨張を繰り返すが、こうした機械的ストレスが電極を急速に破壊する可能性がある。このため研究チームは現在、小さなばねを使って正極の特殊層の研究に取り組んでいる。

 新しい電池のデザインは、22年までに機能実証ができればミュンスターのセル生産研究所に引き渡される。これらの取り組みはすべて、最終的にドイツでの大規模なバッテリー生産を確立するために行われている。

https://www.iws.fraunhofer.de/en/pressandmedia/press_releases/2019/presseinformation_2019-14.html