Thursday, December 07, 2023 6:12 AM

ONEのEV電池パック、BMW車で航続距離608マイル達成

 ミシガン州の新興電池メーカー、アワ・ネクスト・エナジー(ONE)は、2種類の電池を組み合わせた同社の電気自動車(EV)用電池パック「ジェミナイ(Gemini)」が、BMWのEV「iX」で608マイルの航続距離を達成したと発表した。この数字は欧州の燃費基準WLTPに基づいている。

 オートモーティブ・ニュースによると、ジェミナイ電池パックによってiXの航続距離は、米環境保護局(EPA)による推定約300マイルから大幅に増加した。市場調査ガイドハウス・インサイツのサム・アブエルサミド氏は「電池パックを物理的に拡大したり重量を増やしたりはしておらず、実に素晴らしい。業界に何ができるかを示す重要なステップ」と評価している。

 航続距離に対する懸念は、EV普及の障害になっている。市場調査JDパワーによると、現在ほとんどのEVの航続距離は200〜300マイルで、高級モデルでは500マイルを超えるものもある。ONEは、2026年に予定している商業化に備えてジェミナイに改良を加え、コンバーターの効率改善、レンジエクステンダー(航続距離延長装置)の最適な使用に向けた制御アルゴリズムの強化、セル(電池の単体)の検証や開発などを進める。

 ジェミナイは、化学的性質の異なる2種類の電池で構成される。一つはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池で、約150マイルの航続距離を提供し、日常的な移動需要の99%を満たす。もう一つはエネルギー密度の高いアノードフリー(負極のない)電池で、450マイル超の航続距離を実現する。2種類の電池は、一般的なEVの電池パック用スペース(容量300〜400リットル)に収まる。

 ONEは、EVおよび蓄電システム用の電池を開発しており、23年5月には「航続距離600マイルを目指す」と表明していた。24年後半にはミシガン州バンビューレンの工場で商用車および蓄電システム用電池の生産を開始する予定で、25年には航続距離350マイルの乗用車用LFP電池「エリーズ・ツー(Aries II)」を、26年にジェミナイを発売する予定。

 最近は、需給の均衡を取るため自動車メーカーがEVの発売を遅らせ、投資を減速させている。ONEも今回の発表の数日前、市場環境に対応するためとして従業員の25%に当たる128人の解雇を発表した。

 EVの登録台数は増えており、エクスペリアンによると23年1〜9月の米ライトビークル市場のEV構成比は7.4%で、前年同期の5.2%から上昇した。ただ、1月の7.1%からはあまり伸びておらず、3.1%から5.6%に急上昇した21〜22年に比べると成長ペースは鈍化している。