Friday, January 19, 2024 3:44 AM

EV市場で強まる逆風、中古需要が低迷

 EV市場で逆風が強まっている。は中古の需要がさえず価格が大幅に下落し、新車市場にも悪影響を及ぼしているのだ。ブルームバーグが事情を伝えている。

 1兆2000億ドル規模の中古車市場では、EVの価格は内燃エンジン車よりも急速に下がっている。

 テスラや中国EVメーカーによって引き起こされた激しい価格競争は新車と中古車の価値を押し下げ、VWやステランティスなどの収益を脅かしている。自動車やディーラーを格付けするiSeeCars.comのデータによると、10月までの1年間で中古EVの価格は約30%下落した。これに対し、中古市場全体の価格下落率は5%。中古EVは大幅な値下げをしてもガソリン車より販売に長い時間がかかる。

 欧州では新車の多くがリース販売であり、自動車メーカーやディーラーは価格急落による損失をリース料の引き上げで埋め合わせようとしているため、EV需要にさらに打撃を与えている。

 21年に欧州で販売された120万台のEVの多くが24年に3年のリース期間を終えて中古市場に出回るため、問題はさらに深刻化する。トヨタ自動車の欧州地域責任者、マット・ハリソン氏は「EVには中古市場がない」と指摘。「コスト・オブ・オーナーシップの問題に大きく影響している」と語った。問題のひとつは、業界全体が中古EVの取り扱いに慣れていないことだ。内燃エンジン車は年式や走行距離ですぐに評価できるが、バッテリーの品質を判断するテストは普及していないと、VW系ディーラーの幹部は語る。バッテリーはEVの価値の約30%を占めているが、この比率は今後数年で下がると予想されている。

 各社はEVをライドシェアサービスのスタートアップなどに供給する予定だが、そうした市場の需要には限りがある。不要になった内燃エンジン車はアフリカに行き着くことが多いが、アフリカは充電インフラが整っていないためEVの受け入れは難しい。

 EV市場を巡っては中国が教訓を与えてくれる。手厚い補助金などで中国は世界有数のEV大国になったが、廃棄された大量のEVが雑草やゴミの中に放置されている。仮に欧州や米国で似たような事態となれば、政治家からEV業界への援助縮小を求める声が強まる可能性がある。