Tuesday, October 15, 2024 6:52 AM

CEOの政治色強い企業は不祥事多い〜最新論文

 保守派かリベラル派かを問わず政治色の強いCEOを持つ企業は不正行為を起こす可能性が高いという共同論文を、米国とオランダの大学研究者が発表した。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、ラトガース大学のトーマス・フューワー助教授(戦略経営学)と蘭エラスムス大学のムラット・タラクチ教授(イノベーション戦略)は、2010〜18年に起きたフォーチュン500企業の不祥事を分析してこの結論を導いた。

 フューワー助教授によると、強い政治的信念の持ち主は、他人の意見を軽視する「われわれ対彼ら」の考え方を持ち、不当な道徳的優越感を抱く傾向があり、自分自身に道徳的許可を与えて悪い行為を正当化するという。

 両研究者は、外部のデータベースを用いて450を超える連邦、州、地方の規制当局が提訴し5000ドル以上の罰則を科した不祥事を調べ、政治家候補や関連団体への献金額と頻度に基づいてCEOの党派性の指標を作成した。年齢や性別といった人口統計学的な違いや、CEOの在任期間、取締役会の独立性、会社の財務健全性といった変数は抑制した。さらに、X(旧フェイスブック)のようなプラットフォームを政治的発言の場と考える主に若いCEOと、SNS投稿をあまり好まない年長の経営者の世代間格差を避けるため、ソーシャルメディアの言説は意図的に分析から除外した。

 また、CEOが決算報告の質疑応答で、「I」「me」「mine」といった言葉や、「noble(尊い)」「righteous(正しい)」といった単語の使用頻度も分析。過去の研究によると、こうした言葉の多用は他者の視点を軽視し独善的であることを示す。

 最終的に498社と831人のCEOで構成された研究サンプルを分析した結果、ほぼ4分の3に当たる365社で不正行為の事例が見つかり、罰金対象となった違反件数の中央値は1社当たり4件だった。リベラルか保守かにかかわらず最も党派的なCEOが率いる企業は、党派的でないCEOが率いる企業よりも不正行為を犯す可能性が50%近く高かった。

 チームは、何らかの未知の変数が企業レベルで不祥事を引き起こしていないことを確認するためCEOの交代についても分析した。その結果、企業が政治的に中立なCEOを非常に党派的な煽動者に置き換えたり、超党派のCEOの死亡や退任により党派的CEOが後任に就いた場合に、企業の不祥事が増加することが分かった。フューワー氏は「熱狂的な党派意識は他人の視点で考えることを難しくする」と指摘した。