Wednesday, July 19, 2017 9:59 AM

銀行預金残高が大幅増〜米経済の不透明感など背景に

 米国の雇用市場は安定しているものの経済の先行きが不透明なため、中産階級の多くが支出を抑制し、その分を銀行に預けている。

 USAトゥデイによると、連邦預金保険公社(FDIC)のまとめでは、銀行預金総額は近年堅調な伸びを維持しており、2016年は前年から6.6%増加して10兆7000億ドルに達した。また、経済分析のモーブス・サービシズ(Moebs Services)によると、17年1〜3月期は銀行の資産に占める預金の比率が77.6%に達し、06年以降最高を記録した。米国人は流動性を好むため、このうち約2兆ドルが当座預金(checking account)口座に入っており、平均残高は約3600ドルと07年の1000ドルから大幅に増えている。

 預金が増加した背景には、国内経済が深刻な金融危機から立ち直り、拡大を続けて給与収入が安定したことがある。さらに、低金利による投資の選択肢不足も銀行を利用する動きを促進している。ギャラップによると、株式に投資している米国人は約半数にとどまり、CDや普通預金など他の一般的なオプションは利率が当座預金とあまり変わらない。

 貯蓄は個人金融の美徳のように考えられているが、消費者が余分にお金を使わないと経済は低迷する恐れがある。国内個人消費支出はほぼ横ばいで、5月は前月比0.1%の増加にとどまっており、小売りや自動車販売は低迷している。モーブスのマイク・モーブスCEOは「消費者や小企業にとってグレート・リセッションはまだ終わっていない。小企業は大きな不安を抱え、非常に慎重になっている。特に投資計画でその傾向が顕著」と指摘する。

 多額の債務も世帯支出の決定に影響を与えており、ニューヨーク連銀によると、米世帯の債務残高は1〜3月期に前期比1.2%増加の12兆7300億ドルとなった。増加は11四半期連続で、過去最高だった08年7〜9月期の12兆6800億ドルを上回っている。

 一方、預金の増加は大手銀行には朗報で、銀行は金利の上昇でも恩恵を受ける見通し。連邦準備制度理事会(FRB)は主要な短期金利の引き上げを続けるで、金利が上がればローンの利息収入と預金顧客への利子支払いの差額(スプレッド)が増加し、スプレッドが増えるとさらにローンを増やせる可能性が出てくる。