Wednesday, August 31, 2016 10:10 AM
刑務所の通貨は即席ラーメン〜受刑者が裏取引で利用
かつて刑務所内で何にでも使える最も強い「通貨」と言えばたばこだったが、最近はインスタント・ラーメンが受刑者たちの物資調達で重要な役目を果たしている。
公共放送NPRによると、アリゾナ大学の大学院生マイケル・ギブソンライト氏は、男性受刑者数千人を収容するある州立刑務所で受刑者と職員約60人にインタビューし、それを基にした論文をこのほど米国社会学協会の学会で発表した。
刑務所内にはインスタント・ラーメンによって成り立つ裏経済が存在し、受刑者が寝床の掃除や洗濯といったサービスをほかの受刑者に依頼する際や、新鮮な果物や野菜を裏取引で購入する際の対価として、袋入りラーメンが使われている。ラーメンは所内ではスープとも呼ばれ、個人ロッカーに何個持っているかがその受刑者の裕福度を示すという。
刑務所の通貨としてラーメンが浮上したのは、経費削減で刑務所の食事事情が悪化し、安くておいしく、高カロリーで所内の売店でも手に入るといった利点を備えているためと見られる。ギブソンライト氏の研究のきっかけとなった書籍「Prison Ramen: Recipes And Stories From Behind Bars」の著者で元受刑者のグスタボ・アルバレス氏も「刑務所ではラーメンが皆の常食で、誰でもラーメンを作る。各種取り引きでも使われ、嫌いで食べない人でも通貨として使っている」と話す。
ウィンナー・ソーセージ、サヤインゲン、ニンジンなど厨房係との裏取引で調達できる食べ物を混ぜた「ダーティ・ラーメン」や「ラーメン・ポット・ロースト」といった、ラーメンをベースとする刑務所独特の料理も生まれている。
非営利報道機関ザ・マーシャル・プロジェクトが昨年発表した報告書によると、国内の多くの刑務所が受刑者に十分な食事を与えていないとして、非難や訴訟の対象になっている。ジョージア州のゴードン郡刑務所の場合、食事は1日2回で、必要最低限のカロリーは提供しているが受刑者はシロップの袋をなめたり水を大量に飲んだりして空腹を満たしているという。