Friday, January 05, 2024 6:38 AM

世界の水素プロジェクト、23年は35%増加

 高金利やサプライチェーン(供給網)の制約といった逆風にもかかわらず、世界の水素市場は成長している。2023年に発表された大規模水素プロジェクトは1月以降約35%増加し、1400件を超えている。

 グリーンカー・コングレスによると、水素協議会(Hydrogen Council)とマッキンゼーの調査報告書「Hydrogen Insights 2023 December Update」は、これらのプロジェクトを分析し、世界の水素開発に関する最新情報を提供している。

 23年に発表されたプロジェクト計画には、クリーン水素の製造、エンドユース、インフラなどが含まれ、その規模は合計で5700億ドルに達している。地域別では欧州が引き続き先行し、1900億ドル以上の投資を発表している。ただ、公表された投資のうち最終決定しているのは全体で7%に過ぎず、欧州ではわずか4%(80億ドル)、北米では15%(100億ドル)、中国では35%(120億ドル)となっている。

 発表済みプロジェクトによるクリーン水素の生産能力は、30年までに45MTPA(100万トン/年)だが、そのうち23年10月時点で最終決定されているのは3MTPAにとどまる。

 報告書によると、世界の脱炭素化を軌道に乗せるにはさらに4300億ドル分のプロジェクトが必要で、より多くのプロジェクトの発表や、既存のプロジェクトをより早く成熟させる必要がある。こうした水素の開発はマクロ経済環境が厳しさを増す中で展開されており、資本コスト、設計・調達・建設(EPC)コスト、再生可能電力コストの上昇によって再生可能水素の製造コストはこの1年で30〜65%上昇し、1キロ当たり4.5〜6.5ドルになったと推定される。ただし長期的には、30年までに2.5〜4ドル/kgまで下がると予想される。

 再生可能水素の設備投資と総コストを下げるには、50年までに電解槽コストを最大70%削減することが最も効果的と考えられる。しかし、再生可能水素製造の資本的支出を完全に最適化するにはプロジェクトの標準化などのさらなる対策が必要で、30年までに45%減少する可能性があるものの、積極的なプロジェクト最適化によりコストをさらに25%減らすことも可能と見られている。