Monday, March 25, 2024 7:11 AM
広がる「現金お断り」禁止令〜キャッシュレス社会に反動
日本社会が遅ればせながらキャッシュレス化に動き出す中、既にクレジットカードやスマートフォンのアプリなどが広く普及する米国では、行き過ぎたキャッシュレス化に対する反動が強まっている。首都ワシントンなどの主要都市では、飲食店や小売店の「現金お断り」を禁止する条例が広がっている。(時事通信社ワシントン支局・樋口悠)
◇現金使用の割合は急減
米国では近年、買い物で現金を使う人が激減している。連邦準備制度理事会(FRB)によると、2022年に行われた全ての決済のうち、現金の割合は18%にとどまり、19年(26%)から顕著に減少した。調査会社ギャラップの22年の世論調査でも、買い物の「全て」「ほとんど」を現金で決済すると答えた人の割合は13%のみで、17年調査の28%から減少。逆に全体の60%が現金を「全く使わない」「ほぼ使わない」と回答した。
キャッシュレス化が急速に進んだ背景には、利便性の高さや新型コロナウイルスの流行などがあるが、それだけではない。都市部では強盗や窃盗などの犯罪が増加し、多額の現金を保管するのは危ないという店舗側の切実な事情もある。このため、窃盗被害に遭ってから「現金お断り」を掲げる店舗もあった。
しかし、これに対して銀行口座を持つことができない低所得者層、カードを使い慣れない高齢者層などを「置き去りにしている」との批判が浮上。政治が主導する形でニューヨークやサンフランシスコなどの主要都市、さらにマサチューセッツ、デラウェアなどの各州がここ数年「現金お断り」禁止令を施行した。