Wednesday, June 12, 2024 7:14 AM
3D印刷技術で電気モーターを改善〜ミシガン大など研究開始
高効率で低コストの電気モーターを開発するミシガン大学主導のプロジェクトが始まった。期間は3年、エネルギー省自動車技術局から260万ドルの助成を受け、最終的に重レアアース(重希土類)を使わないモーターの開発を目指す。
◇軟磁性コアに焦点
グリーンカー・コングレスによると、研究チームが取り組むのは、レーザー光を使って粉末状の材料を溶かし、融合させる「レーザー粉末床溶融」または「選択的レーザー溶融」と呼ばれる新技術の開発。これを使ってモーターの軟磁性コアと永久磁石の改良版を積層造形(3Dプリント)で製造する。コアと磁石は、モーター内で電流に反応してトルクと回転を生み出す重要な部品。
既存の最も効率的なモーターでは、ローターに装着された永久磁石が磁場を発生させ、積層シリコン鋼の軟磁性コアが磁束を誘導する。研究チームは、高性能ナノ結晶軟磁性コアと機能性傾斜永久磁石の試作を目指しており、第1段階では軟磁性コアに焦点を当てる。
従来のシリコン鋼コアは、金属板を溶かした後、冷間圧延、プレス加工、コーティング、積み重ねて望ましい特性を達成するという複雑な工程を経て作られている。
鉄シリコン(Fe-Si)や銅ニオブを添加した鉄ホウ素シリコン(FeBSi/CuNb)などのナノ結晶軟磁性材料がシリコン鋼より約10倍高い性能を持つことは、1960年代から知られているが、これまでに試みられた製法はコストがかかりすぎた。
ナノ結晶軟磁性材料は、一般的に鉄系合金の一種で、ナノメートル(ナノは10億分の1)単位の微細な結晶構造を持ち、独特の磁気特性を持つ。透磁率が高いため比較的低い磁場でも強い磁化が可能で、保磁力が低いため磁場の変化に迅速に反応でき、渦電流損失が低いため熱として失われるエネルギーが少ない。
研究チームは、実際に部品を鋳造、ラミネート、ツーリング(金型、設備の設計・製作)することなく、レーザー積層造形とナノ粒子誘導核形成による迅速な凝固を使ってナノ結晶軟磁性コアを層ごとに目的の形状で3Dプリントすることを目指す。