Thursday, August 22, 2024 6:59 AM

ユミコア、カナダの電池素材工場建設を中止〜EV市場低迷で

 ベルギーの非鉄金属技術大手ユミコア(Umicore)は、電気自動車(EV)の販売低迷を理由に、2023年からカナダ・オンタリオ州で進めていた電池材料工場の建設を延期すると発表した。

 公共放送CBCによると、ユミコア・リチャージャブル・バッテリー・マテリアルズは声明で「ロイヤリストタウンシップのプロジェクトは、EV市場の深刻な悪化とそれがサプライチェーン全体に与える影響で打撃を受けている」と述べた。このプロジェクトには総額27億6000万ドルが投じられ、23年には「地域で600人の雇用を創出する」と予測されていた。

 カナダ連邦政府も最大5億5130万ドルを投資し、州も最大4億2460万ドルを支援することになっていたが、関係者の話によると、現時点で州からの資金は支払われていない。

 ユミコアは6月、中国メーカーとの契約が実現しなくなったと発表した。欧州でも従来の契約が予想より早く減少し、契約拡大も遅れている状況だといい「当社の電池材料に対する顧客の需要予測は、最近急激に低下している」と説明した。

 同社は現在、新たな市場の現実に即して事業を再編中で、その一つとして電池材料事業の徹底的な見直しを行っており、その結論は25年1〜3月期に発表する計画だという。

 オンタリオ州にあるマクマスター大学のグレイグ・モルデュー准教授(工学)は、連邦政府も州政府も早く市場に参入したかったと指摘。「彼らは一番になりたかった。独自で市場を作るならそれでいいが、現実にはカナダの自動車産業は世界中のサプライヤーや関連会社で構成されている」「政府は多額の資金を投入したあるいはする予定だったが、業界側がまだそこまでに至っていない」とみている。

 モルデュー氏はまた、最近EVの生産を縮小したフォードを引き合いに「いったん立ち止まって自社の立ち位置を評価し、市場が追いつくのを待つのはユミコアだけではない」と述べた。