Friday, November 01, 2024 7:19 AM
LG化学、電池の熱暴走を抑制できる新素材開発
LG化学のプラットフォーム・テクノロジー研究開発(R&D)部門は、電池の熱暴走を抑制できる温度応答性安全強化層(SRL)を開発した。
リサイクリング・トゥデイによると、浦項(ポハン)工科大学(POSTECH)電池工学科との共同研究で、グループ傘下の電池大手LGエナジー・ソリューション(LGES)と協力して安全性を検証しながら材料を分析し、研究成果は科学誌Nature Communications9月号に掲載された。
熱暴走を抑制するこの製品は、温度によって電気抵抗が変化する複合材で、過熱の初期段階で電気の流れを遮断するヒューズの役割を果たす。研究チームはこの新素材で厚さ約1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)の薄い層を作り、電池内の正極層と集電体(電子の通り道となるアルミ箔)の間に配置。電池の温度が通常の範囲(90〜130℃)を超えて上昇すると、熱に反応して素材の分子構造が変化し、電流の流れを抑制する。
温度に対する反応は非常に敏感で、1℃上昇するごとに電気抵抗が5000オーム(Ω)上昇し、最大抵抗値は常温の1000倍以上になる。可逆性も備え、温度が下がれば抵抗値が下がって元の状態に戻り、再び電流が正常に流れるようになる。
熱暴走は電池内部の正極と負極が何らかの原因で直接接触し、ショートを起こして発熱することで起きる。接触の数秒以内に温度は1000℃近くまで上昇し、発火に至ることもある。
新素材は、過熱の初期段階で反応経路を遮断することにより、火災を防ぐ効果が期待できる。電池の衝撃試験と貫通試験でも発火せず、炎が上がってもすぐに鎮火して本格的な暴走を阻止できたという。携帯電話用のコバルト酸リチウム(LCO)正極リチウムイオン電池を使った貫通試験では、釘で電池に穴を開けても発火しなかった。
通常の電池の発火率は16%。さらに、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)三元系正極リチウムイオン電池に10キログラム(kg)の重りを落とす衝撃試験では、標準的な電池はいずれも発火したが、新素材を使った電池の70%は全く発火せず、残り30%は炎が表れたがすぐに消えた。携帯用電池における新材料の安全性検証試験は完了しており、大容量のEV用電池の安全性試験は2025年まで継続する予定。