Tuesday, July 26, 2016 5:42 PM

「平和をつくる力に」 はだしのゲン、台湾で出版

 2012年に73歳で亡くなった中沢啓治さんが自身の被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」全10巻が初めて中国語に訳され、6月末までに台湾で出版された。翻訳を始めてから書店に並ぶまで約9年。中国人の知人ら6人と出版にこぎ着けた名古屋市のフリーアナウンサー坂東弘美さん(68)は「本が平和をつくるための力になってほしい」と話している。

 出版のきっかけは、チェルノブイリ原発事故の被災地を1990年に訪ねたことにさかのぼる。後にロシア語版を出すことになる翻訳者と現地で知り合った坂東さんは、中国語版を出すことを考え、北京の放送局で働いた時の知人に相談、07年に作業を始めた。

 当初は中国本土での出版を考えたが、靖国神社参拝や尖閣諸島問題を巡って日中関係は徐々に悪化。「戦争加害国の日本が被害国の立場で描かれた本を出版するのは時期尚早。引き受けられない」。中国の出版社から良い返事は得られず、時間は過ぎていった。(共同)