Monday, August 01, 2016 5:51 PM

「多くの命、見殺しに」 元看護婦、被爆伝え続ける

 送られてきた原稿を、パソコンに丁寧に打ち込む。広島県府中市の元看護婦内田千寿子さん(93)が、被爆者や戦争体験者の思いを文集にまとめるようになって40年ほどたつ。「あの時、あまりにも多くの命を見殺しにした。できるだけ、戦争にならんように」。その一心で発信を続ける。

 22歳の時、原爆投下5日後の広島に入り、日赤病院で救護に携わった。足の踏み場もなく、やけどに白い薬を塗った「お化けのような人々」が横たわる中、身元の分からない遺体を運び出しては、外で焼いた。

 喉が詰まりそうだという男性にピンセットを渡すと「ガッガッ」と音を立て、口から大きな血の塊を引き出した。「僕の体が溶けているんだ。東京の両親を呼んでください」。電話も電報もなく何もできなかった。「死にたくない」と哀願する兵士を何人もみとった。(共同)