Tuesday, June 02, 2020 10:15 AM

人間の手の感覚を模したロボティック・グリッパーに現実味

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ科学&人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory=CSAIL)の研究者らは先日、発表した二つの研究論文のなかで、人間の手を模した触感を持つ機械手(ロボティック・グリッパー)に関する研究&開発成果を報告した。

 ベンチャービート誌によると、一つは、折り紙のような「ひだ」を多数組み込んだ円錐形の装置で、もう一つは、2本の「指」でモノをつかむグリッパーだ。

 この種の装置は一般に「ソフト・ロボティクス」と呼ばれる。柔らかな材料を使った機械手によって、さまざまの形状や重さ、大きさのものを「つかむ」ことを目的としている。

 ロボット工学者らにとって、物体をつかみ取る機械手の開発は難しい。対象物の大きさや重さ、表面抵抗に応じて最適の圧力を判断し、対象物を壊さないようにつかみ取ることをロボットに実行させることがきわめて難しいからだ。

 円錐形の装置のほうは、MITとハーバード大学の研究成果として2019年に発表されていた。今回の改良版は、ゴム製の袋と圧力変換機を使った触感検知器が追加され、ポテトチップのように壊れやすいものもつかむことができ、同時に何をつかんだかを認識できる。

 ボトルや箱、リンゴといった家庭内の身近な物体256個のサンプルで行った10回の実験では、100%の精度で物体を識別できた。缶やスポンジ、クッキーの入った袋を使った実験では、精度が80〜90%だった。

 もう一つの研究では、シリコン製のグリッパーを使用し、指先に1台のカメラ、中ほどにもう1台のカメラを搭載したほか、前方と側方に反射塗料を施し、後方にLED照明を搭載した。カメラには魚眼レンズが採用され、物体をつかんだときの指の変形具合をとらえる。その画像データを人工知能で分析して、何をつかんだかを判断する。

 実験では、ルービック・キューブやDVDのケース、アルミ製の四角い塊をつかむことができた。つかむ際の位置取りの誤差は0.77ミリ未満で、人間の指よりも精度が高かった。さまざまの円柱形と箱型の物体は、80回中77回、正確に認識した。

 それら二つの機械手が実用化されれば、自動化がこれまで不可能だった製品の生産工程や仕分けを劇的に自動化できるようになる。

https://venturebeat.com/2020/06/01/mit-csail-teams-propose-grippers-with-a-humanlike-sense-of-touch/