Friday, October 29, 2021 9:22 AM

海運会社への融資はESG重視〜金融機関、投資家の圧力受け

 環境対応・社会責任・企業統治(ESG)を重視する投資家が増える中、銀行も海運会社への融資ではより厳格な環境対応基準を当てはめるようになっていることが、ボストン・コンサルティンググループ(BCG)の調査で分かった。

 ロイター通信によると、世界の交易の約90%を占める船舶輸送は、二酸化炭素(CO2)の排出量では世界の約3%を占める。BCGは、2050年までに海運業界がCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)を達成するには2.4兆ドルの設備投資が必要だと推測する。

 国連の国際海事機関(IMO)は、船舶が排出する温室効果ガスを50年までに08年比で50%に削減する目標を掲げている。しかし、業界団体はより積極的な取り組みを各国政府に求めている。

 BCGのピーター・ジェイムスン氏は「ESG関連の要求は、銀行により積極的な行動を迫っている。海運業界はそれを実感しており、各社は圧力を受けている」と語る。BCGは31日から英北部グラスゴーで始まる第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)のコンサルタントを務めている。

 英スタンダード・チャータード銀行はすでに掘削サービスのオデフィエル(Odfjell、ノルウェイ)とオマーン国営海運会社Asyad Shippingに対して、持続可能性の達成目標を示した上で融資を行っている。

 ジェームスン氏によると、銀行が新しい資産への融資を検討する際、自行の方針を通じてCO2削減に向けたより大きな道筋を創出しようとする。同時に銀行は保険会社が株主からの圧力を感じていることを知っており、これは巨額の資産を運用する年金基金が投資先を見直す理由にもなっている。

 アナリストの推定では、金融機関は現在、大手海運企業に年間3000億ドル近い融資を行なっている。ジェイムスン氏によると、業界が50年までのネットゼロ達成で必要な2.4兆ドルのうち、約1.7兆ドルは次世代燃料の開発に充てられる見込み。「資金源はすでに固まりつつあるが、それ以上に多額の資金が必要だ」

 BCGは、30年までにESG関連の運用資産が海運業界への融資総額の最大80%を占めると試算している。