Tuesday, July 18, 2023 3:43 AM

労働者たちの出社再開が停滞

 2023年に入ってからの米都市部における平均オフィス稼働率は、新型コロナウイルス・パンデミック以後初めて50%を超え、労働者たちが以前の勤務習慣をようやく取り戻し始めたかにみえたものの、その後に停滞している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、多くの会社がハイブリッド勤務(出社と在宅の混合)を定着させたことから、オフィス利用率はこの数ヵ月ほどほとんど変わっていない状態だ。

 4500社近い会社の職場戦略を追跡する指標を開発したソフトウェア会社スクープ・テクノロジース(Scoop Technologies)によると、約58%の会社が、少なくとも部分的な在宅勤務を認めており、毎日出社を求める会社の割り合いは3ヵ月前の49%から42%に減少した。また、ハイブリッド勤務を実行している会社の従業員らは、平均して週に2.5日出社している。

 また、米主要10市場でのオフィス・ビル入館証使用状況を追跡するキャッスル・システムス(Kastle Systems)によると、2023年1月下旬での平均的なオフィス利用率は、パンデミック前水準の50%を超えたが、以降、横ばいが続いている。

 スクープのロバート・サドウCEOは、米国では全般的に人手不足が続いていることから、「週5日出社の要求に強く反発する姿勢が被雇用側に根強く、現在の労働市場ではほとんどの会社がそれを従業員らに求めるのに消極的だ」と指摘する。

 そうしたなか、弊害に直面する業界もある。事務所物件の所有会社らは事務所家賃の低下によって家賃収入が激減した。自治体は、事務所物件の価値下落による固定資産税収入の減少を強いられている。出勤者人口に支えられていたレストランやバーも客の減少に直面している。

 職場環境調査研究所のWFHリサーチによると、ニューヨーク市では一人の労働者が自宅で働くことで市内会社らの売上高に年間約4600ドルの影響が出ている。

 ニューヨーク市のエリック・アダムス市長はそれを受けて、2000年以前に建てられたオフィス・ビルを建物所有者が改築する際の税優遇措置を発表し、事務所空間を魅力的にすることで入居率上昇の一助になることをねらった政策を打ち出している。

 キャッスルの調査では、出社率が高いのは週5日出社を義務づける会社が多いテキサス州で、5月第1週にはオースティンとヒューストンで60%を超えた。在宅勤務にもっとも寛容なのは依然として技術会社らだ。そのため、サンフランシスコやサンノゼ、シアトルといった技術業界集積都市では出社率が低い。

https://www.wsj.com/articles/the-return-to-the-office-has-stalled-e0af9741?mod=business_lead_pos5