Monday, July 22, 2024 7:10 AM
新技術使ったリチウム生産始まる〜IBATが開発、業界初
金属マグネシウム製造大手USマグネシウムのユタ州の工場で、インターナショナル・バッテリー・メタルズ(IBAT、本社テキサス州)が開発した直接リチウム抽出(DLE)技術を用いたリチウムの商業生産(年間約5000トン)が始まった。DLEによるリチウムの大規模生産は世界初。
◇クリーンエネルギー転換の節目に
ロイターによると、DLEによるリチウムの商業生産は、投資家、アナリスト、顧客から長年注目され、IBATのほかスタンダード・リチウム、SLB、リオ・ティント、エラメなどが競い合っていた。今回、商業規模の生産が可能と証明されたことで、石油の生産量がフラッキングや水平掘削で激増したように、電気自動車(EV)などに必要なリチウムの生産ペースおよび効率が一変すると見込まれる。アナリストらは、DLE技術は10年以内に100億ドル規模の産業に成長すると予測している。
米地質調査所(USGS)の推定では、リチウム世界埋蔵量のおよそ70%は、欧州、アジア、北米などで塩湖の沈殿物(brine deposits)の形で存在する。リチウムは歴史的に蒸発池や露天掘りといった手法で生産されてきたが、いずれも水を大量に使用する上、場所を取り、開発・生産に長い時間がかかるため、それらに代わる第三の選択肢が必要とされてきた。
DLE技術にはさまざまな技術があるが、どれも塩水から約90%以上の割合でリチウムを取り出すことを目指している。蒸留池の抽出率は50%で、アルカディウム・リチウム(ペンシルベニア州)などはDLEと池と併用しているが、これまで池を使わずにリチウムの商業生産に達したDLE技術はなく、降水量が少なく蒸留池が現実的ではない地域で生産量を拡大するための競争が繰り広げられていた。
IBATの手法は、ジョン・バーバ会長が1980年代にダウ・ケミカルで開発した技術などが基になっており、同社は今後さらに多くのプラントを建設し、世界中で使えるように販売する計画だ。