Tuesday, October 01, 2024 7:08 AM

構造体電池の研究で進展〜スウェーデンの研究班が報告

 チャルマース工科大学(スウェーデン)の研究班は、電気自動車(EV)の航続距離を最大70%延ばせるという構造体電池(structural battery)の開発で進展を報告した。

 エレクトライブによると、研究チームは、アルミニウムと同程度の剛性を持ち、商業的に利用できるほどエネルギー密度の高い炭素繊維複合材で車体の構造体としての役割を持たせた電池を作ることに成功。「人間の骨格のように、同時にいくつもの機能を果たす」という。

 同大学は構造体電池の研究を数年前から進めており、研究チームは2021年、電池の重量エネルギー密度を1キログラム当たり24ワット時(Wh/kg)と発表していた。これは同等のリチウムイオン電池の容量の約20%に相当し、現在は最大30Wh/kgに達しているが、それでもまだ既存の電池よりは低い。

 ただし、構造体電池は車両の構造に組み込まれるため、軽量の素材で製造できれば車全体の重量が大幅に減り、EVを動かすのに必要なエネルギーも減らせるという大きな利点がある。研究班を率いるレイフ・アスプ教授(産業・材料科学)は「エネルギーを節約し、将来の世代のことを考えるなら、軽量でエネルギー効率の高い車に投資するのは自然の成り行きだ。私たちの計算では、競争力のある構造体電池を搭載すればEVは現在よりも最大70%長い距離を走れる」と話す。

 自動車の設計には安全要件を満たせる十分な強度が要求されるが、研究班が開発した構造体電池は、その剛性、正確には単位ギガパスカル(GPa)で表される弾性係数が25から70に向上している。これは、研究班が使う炭素繊維材料が、アルミと同等の強度を持ちながらより軽いことを意味する。

 07年から構造体電池の研究に取り組んでいるアスプ教授は「新しい電池は、多機能性という点でこれまでの電池の2倍の性能があり、実際にこれまで世界で作られた中では最高」と断言する。すでにチャルマース大学は、この技術の商業化を念頭にシノナス(Sinonus、同国ボロース拠点)というスピンオフ企業を立ち上げている。

 ただし、電池が実験室での小規模生産から技術機器や自動車用の大規模生産へと移行するには、まだ多くの開発作業が必要になる。