Tuesday, October 14, 2025 7:02 AM
UCリバーサイド、「本当の航続距離」の予測ツールを開発
カリフォルニア大学リバーサイド校(UCリバーサイド)の研究チームは、電気自動車(EV)の「本当の航続距離」を予測する新しい人工知能(AI)ツール「State of Mission(SOM)」を開発した。
エレクトレックによると、EVの電池残量が「40%」と表示されていたとしても、ヒーターを入れたまま時速65マイルで山道を走った場合は山越えできるとは限らない。SOMはこうした不確実さを解消し、本当にどこまで走れるのかを正確に把握する目的で開発された新しい診断ツールで、単なる電池残量(state of charge)ではなく、ミッション(目的地までの走行)を完遂できるかどうかの予測に役立つ。標高、交通状況、気温、運転スタイルなどを考慮し、特定の道筋を安全かつ確実に走破できるかどうかを教えてくれる。この研究論文は科学誌「iScience」に掲載された。
開発に携わったミフリ・オズカン教授(工学)は「SOMは、データと物理モデルを融合させて、現実の環境下で車載電池が予定されたタスクを完了できるかを予測する『ミッション対応型』の指標だ」と説明する。
現在のEVの電池管理システムは、物理モデルかブラックボックス的なAIモデルのいずれかに頼っているが、SOMはその両方を組み合わせ、機械学習の柔軟性と電気化学・熱力学の信頼性を両立させたハイブリッドモデルとなっている。時間の経過とともに電池の充放電や発熱の挙動を学習するが、物理的な法則に根ざしているため、寒波や急な坂道といった予想外の条件にも対応できる。
このシステムは連邦航空宇宙局(NASA)と英オックスフォード大学の公開データで検証され、電圧誤差を0.018ボルト、温度誤差を1.37℃、残量誤差を2.42%にまで低減したという。この結果、抽象的な電池データを実際の意思決定に変換し、車両やドローン(無人機)などの安全性・信頼性・運用計画を大幅に改善できるようになった。
SOMはまだ開発段階で、現状では一般的なEVの制御システムの処理能力を超えた計算能力が必要な点が課題だが、最適化を進めればEV、ドローン、電力系統(グリッド)向け蓄電システムなどへの応用が可能になるとみられている。
研究チームは、ナトリウムイオン電池、全固体電池、フロー電池など次世代電池への適用も視野に入れている。