Wednesday, November 19, 2025 6:36 AM
バルカン、希土類磁石の米供給網構築へ〜米政府・投資家から14億ドル調達
レアアース(希土類)磁石の米国内供給体制構築を目指す新興企業2社が、連邦政府および民間投資家から総額14億ドルの資金を調達した。これはトランプ政権が、国内のレアアース磁石サプライチェーン(供給網)構築と中国支配からの脱却を目指し、そのために多額の資金を投じる用意があることを示す新しい兆候といえる。
◇年生産1万トン目指す
ウォールストリート・ジャーナルによると、今回のプロジェクトを主導しているのは元海軍士官ジョン・マスリン氏が率いる新興レアアース磁石メーカーのバルカン・エレメンツ(Vulcan Elements、ノースカロライナ州)だ。同社は年間1万トンのネオジム・鉄・ボロン磁石を生産できる国内工場を建設・運営するため、国防総省の戦略資本室から6億2000万ドルの融資を受けた。さらに商務省からも5000万ドルの支援を受け、民間投資家からは5億5000万ドルを調達した。
レアアース磁石は、人工知能(AI)データセンター、電気自動車(EV)、家電のほか、ミサイル、ドローン(無人機)、人工衛星、艦船、戦闘機などの防衛システムに不可欠なモーターの製造に用いられるが、現在はその供給網の大部分を中国が支配している。
今回のプロジェクトにはレアアース素材の精製・リサイクル技術を持つリエレメント・テクノロジーズ(ReElement Technologies、インディアナ州)も参画しており、使用済み磁石の再生利用を通じて国内供給の強化を図る。リエレメントは国防総省および民間から計1億6000万ドルの資金を調達した。
資金提供の見返りとして、商務省はバルカンから5000万ドル相当の株式を受け取る。また国防総省は両社から、事前に設定された価格で株式を購入する権利(ワラント)を取得する。