Tuesday, June 14, 2016 12:15 PM

IBM、米国糖尿病協会と提携〜ワトソンを活用するソリューションを開発へ

 IBMと米国糖尿病協会(ADA)は、糖尿病の予防や診断、管理に役立つデジタル・ツールの開発に向けて長期的協力を視野に提携した。

 フォーチュン誌によると、両者は同提携のもと、ADAが収集してきた大量のデータをIBMワトソン(Watson)に取り込むことで、研究者や医師、患者にとって役立つさまざまのアプリケーションの開発を目指す。

 ワトソンは、自然言語を理解する人工知能で、米テレビ局の人気クイズ番組で人間の優勝者に勝利したことで有名になった。

 「医師や研究者、患者、介護者だけでなく、起業家にも影響を及ぼしたい」「認知科学のモバイル・アプリケーションを使って糖尿病患者を助ける創造的な方法を模索している人たちを支援したい」と、IBMワトソン・ヘルス事業部門のキュー・リー最高保健責任者は話す。

 ADAは、過去66年以上にわたって各種のデータを集めてきた。臨床研究や自己管理、支援団体、健康維持活動、啓蒙活動といった幅広い分野の情報を蓄積している。

 IBMとADAは当面、糖尿病に関する認知データベースの構築に注力し、臨床医と研究医が使えるようにする環境をまず整備する。臨床医にとっては、患者のための最適の治療計画を立てる際に役立つデータベースとなり、研究医にとっては、よく知られていない症状パターンを発見するといった独自の洞察につながるデータベースになると期待される。

 米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国には糖尿病患者が2910万人いる。米人口の約9.3%に相当する計算だ。そのうち28%近くは診断を受けていない。さらに、成人の3人に1人以上にあたる8600万人が前糖尿病状態にあり、そのうち3分の1近くは5年以内に糖尿病を発症する。

 糖尿病にともなう医療費と仕事や賃金の逸失額を合わせると、糖尿病のコストは2450億ドルという巨額に達する、とCDCでは見積もっている。

 糖尿病治療薬は、支出額がもっとも高い処方箋薬の一つだ。処方箋薬を提供するエクスプレス・スクリプツ(Express Scripts)では、糖尿病治療薬の支出額が2016年に18%増になると予想する。

 IBMは、糖尿病管理に以前から取り組んできた。IBMリサーチは過去数十年間に多数の研究論文を出版している。

 IBMはまた、医療機器を開発するメドトロニック(Medtronic)や製薬大手のノボノルディスク(Novo Nordisk)と協力して、ワトソンを活用する糖尿病関連のソリューション開発にも取り組んでいる。

http://fortune.com/2016/06/12/ibm-ada-diabetes/