Friday, October 14, 2022 6:51 AM
アイダホでコバルト鉱山開業へ〜米国内ではほぼ30年ぶり
電気自動車(EV)への移行を支えるEV用電池の需要急騰を受けて、米国でコバルト生産が再開されることになった。最後に国内でコバルトが生産されたのは30年近く前だという。
ブルームバーグ通信によると、オーストラリアのコバルト・ニッケル生産大手ジョボア・グローバル(Jervois Global)は、アイダホ州でコバルト鉱山を開業する。年間2000トンのコバルト鉱石を採掘する予定で、それを国外で精錬した後、米国内に持ち込んで顧客に提供する計画。
同社はブラジルにニッケルとコバルトの製錬所を所有し、カナダやオーストラリアなどでも精錬作業の外部委託を交渉している。
世界のコバルト製錬所の約80%は中国に集中しているが、ジョボアがフィンランドに所有する巨大なコッコラ精錬所など、ほかの場所でも生産能力は拡大している。
ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)によると、大手自動車メーカーが三元系からリン酸鉄系リチウムイオン電池に移行していることを受けて、コバルトの需要は2022年の12万7500トンから30年には15万6000トンに上昇すると予想される。
ジョボアのブライス・クロッカーCEOは、コバルトは国家安全保障上最も重要な課題と指摘しながら「新しい供給源、特に安定した管轄区域での供給源はそれほど多くないため、この米国内の鉱山は非常に重要」だと話す。米地質調査所によると、米国では少なくとも1994年以来、コバルトは生産されていない。
コバルトは、米国が気候変動対策の重要な柱と位置づけるEVの電池生産に不可欠で、政府の重要鉱物リストにも含まれている。カリフォルニアとニューヨークでは、今後数十年以内にガソリン車の新車販売を禁止する法律が可決され、自動車メーカーは野心的な電動化目標の達成に向けて準備を進めており、電池に必要な材料は不足し、世界的にその確保が急がれている。
コバルト鉱の3分の2以上はコンゴ民主共和国(CDR)で生産されているが、汚職、人権侵害、児童労働といった問題があるためその他の国から調達するメーカーが増えつつある。また、米インフレ抑制法(IRA)の成立によって、米国内で調達された電池材料は優遇措置の対象になる。