Tuesday, December 12, 2023 2:40 AM

従業員の離職減少が米企業の新たな課題

 事務職の労働市場が軟化し、離職率が急激に下がっている。米国では新型コロナウイルス・パンデミック中に、多くの会社が大離職の対応に追われたが、現在、自分から辞める人が少なすぎるという逆の課題に直面している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、人が辞めないために各部署の予算が不足し、種々の計画を延期するか解雇するかの選択を迫られている大企業が増えている。

 労働省が発表した2023年10月の雇用統計によると、全米の退職率は3ヵ月連続で2.3%にとどまり、ピークだった2022年4月の3%から低下した。パンデミック期には、働き方を見直す動きや都市封鎖の緩和を受けて、より良い賃金や労働条件を求める退職者が急増し、「大離職(Great Resignation)」と呼ばれる社会現象にもなった。

 しかし、人材派遣会社アデコ・グループが10月に発表した調査結果によると、労働者の73%は現在の職場に留まるつもりだと答え、その割り合いは前年の61%から上昇している。

 バンク・オブ・アメリカは、「新規採用の削減と自然減によって2023年に従業員数を減らす」と1月に説明したが、離職者が予想より少ないため、人員整理は進んでいない。ブライアン・モイニハンCEOは、「記録的な低離職率が続いている」「人員削減を積極化する必要がある」と10月に話した。

 従業員8万人を擁する証券大手モルガン・スタンリーは、従業員の自然減が少なかったこともあり、この数ヵ月に複数の解雇を実施した。かたやウェルズ・ファーゴのマイク・サントマッシモ最高財務責任者は投資家らに対し、「自然減が予想以上に少ないことから、人員削減のために退職金の増額を計画している」と夏に説明した。

 そのほか、製薬会社フェリング・ファーマでは、約6000人の従業員の離職率が5年ぶりの低水準だった2022年を下回っている。米国部門のパービ・テイラー人材資源管理担当副社長は、「人が辞めると、業績の良い従業員に昇進機会を与えることができるほか、新鮮な視点や需要のある職能を持つ新しい人材を迎え入れられる」「しかし、離職率が低すぎると、人事異動が難しくなり、いろんなことが停滞し始める」と話している。

https://www.wsj.com/business/the-new-headache-for-bosses-employees-arent-quitting-edca96a3?mod=business_more_article_pos2