Thursday, March 28, 2024 9:10 AM

電池材料再生ライサイクル、人員の17%削減へ

 リチウムイオン電池の資源回収会社ライサイクル(Li-Cycle、カナダ)は、従業員の17%に当たる60人(上席幹部3人を含む)を削減する。

 ロイターによると、同社はここ数年で急成長を遂げ、北米、欧州、アジアで施設の立ち上げを発表しているが、現在は出費を抑えてニューヨーク州の処理施設の建設に集中するため、野心的な世界成長計画を縮小している。

 今回の人員削減は、電気自動車(EV)用電池のリサイクルという本質的に新しい市場の構築に伴う高いコストと技術的課題を考えると、これまでのような急成長は維持できないことを暗に認める形となっている。60人分の退職金として2024年1〜3月期に830万ドルを計上する予定。削減後の従業員数は約200人になる。

 ライサイクルは23年、四半期売上高が過去最高に達したが、ニューヨーク州ロチェスターに建設している電池処理施設の建設コストが予想以上にかさんでいる。エネルギー省は同年、ロチェスター施設の建設費として条件付きで3億7500万ドルの融資を発表したが、現在、コストの見積もりは約2倍の9億6000万ドルに膨れ上がっている。

 同社はこの大幅なコスト超過と、使用を計画していたリサイクル技術の技術的な複雑さによる株価の下落で、スイスの鉱業大手グレンコアに追加出資を求めざるを得なくなった。グレンコアは3月初め、7500万ドルの転換社債発行を発表し、実行されればライサイクルの筆頭株主となる。

 ロチェスターの施設は、同社の「ハブ・アンド・スポーク」モデルの中心となる施設で、複数の収集・処理施設(スポーク)で電池を細断して作られた破砕くず(ブラックマス)を集め、リチウム、ニッケル、コバルトなどの重要な材料に分離する。欧州にも同様の基幹施設(ハブ)を建設する予定だったが、北米でこのモデルが機能すると証明されるまで計画を保留する。

 アジェイ・コチャーCEOとともに同社を設立したティム・ジョンストン会長は、今回の人員削減の一部として経営から退き、取締役として残る。ほかに国際事業責任者と財務責任者も退任する。