Thursday, May 23, 2024 7:16 AM
マレリ、水素エンジン用新燃料システムを展開
自動車用電装部品大手マレリ(Marelli、旧カルソニックカンセイ)は、水素燃焼エンジン車市場の拡大に伴い、車両メーカー向けに比較的容易な統合と信頼性の向上を提供する新しい水素燃料システムの販売を計画している。
オートモーティブ・ニュースによると、2023年に同社が発表した新システムは、特許取得済みの燃料インジェクター設計と、独自開発した先進的なエンジン制御ユニットで構成され、一般的なソリューションよりも耐久性が高く、噴射の安定性を高めて性能を向上させている。水素燃焼エンジン向けに開発され、従来のガソリン燃料の代わりに水素を使う。
マレリがガソリン車用燃料噴射装置(インジェクター)で培った専門知識を活用し、水素燃料インジェクターの設計は既存のほとんどのガソリンエンジン用と互換性がある。ジョルジオ・ロッシ推進ソリューション担当社長は「これはガソリンから水素への切り替えを望む顧客にとって大きな利点。純粋にパッケージング面の利点だ」と話す。
新しい水素燃料システムの展開は、業界のEVシフトが引き金になった。これまでEV販売の大半はバッテリー式電気自動車(BEV)だったが、今では「長期的な勝者は水素自動車」と見る自動車メーカーやサプライヤーも増えた。ロッシ氏は、BEVのシェアが世界的に拡大し化石燃料車の販売が減少しても、今後数年間はインジェクターなど伝統的なエンジン関連事業がマレリにとって重要な原動力であり続けると見ており、これらの分野の専門知識を生かして同社は水素燃料車向けに技術開発を続ける。
マレリは、ほとんどの市場で短期間に水素燃料の乗用車販売が大きく伸びるとは考えていないが、乗用車以外の分野では有望だと見ており「トラックやオフハイウェイなど、水素の供給インフラが集中している市場には商機があると考えている」(ロッシ氏)という。
水素燃料システムはガソリンエンジンより高い圧縮比が必要になるため、新システムは水素自動車の実現にも役立つ可能性がある。マレリはイタリアの研究開発センターで水素用の直噴インジェクターを開発。信頼性が高く低騒音なインジェクターで、特殊な磁気回路によりニードルの速度を制御して流量安定性を実現しており、さまざまな車両の要件を満たせる。