Tuesday, January 16, 2018 10:29 AM

iPS移植初の重篤合併症 網膜患う70代患者

 神戸市立医療センター中央市民病院と理化学研究所などのチームは16日、他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜の細胞を、目に重い病気のある患者に移植した世界初の臨床研究で、70代の男性患者に網膜がむくむ合併症が起きたと発表した。理研によると、安全性などを確かめるiPS細胞の臨床研究で重篤事例の発生は初。

 原因の一つとみられる「網膜前膜」という部分を15日に手術で除去した。理研の高橋政代プロジェクトリーダーは記者会見で「治療で入院を伴うため重篤のカテゴリーに当たる」としたが、「緊急性や生命への影響はない。今後の臨床研究に影響はない」と説明した。

 チームによると、男性患者は、網膜に障害が起き失明することもある「滲出型加齢黄斑変性」。昨年6月に、中央市民病院でiPS細胞から作った網膜細胞を含む溶液を目に注入したが、逆流が起きて網膜前膜を形成し、網膜がむくむ「網膜浮腫」となった可能性が高いと分析。「移植手術による合併症とみられるが、iPS細胞への拒絶反応や、副作用ではなく、逆流を防ぐ手法に改善の余地がある」とした。(共同)