Friday, August 23, 2019 10:03 AM

油砂や油田から水素を抽出〜カナダ研究班、安い方法開発中

 カナダの研究者らが、オイルサンド(油砂)や油田から水素を低価格で大規模に抽出する方法の開発に取り組んでおり、一部の国で販売が始まっている水素燃料車(FCV)や発電に活用できる可能性が出てきた。

 グリーンカー・コングレスによると、カナダやベネズエラには大量の原油供給源があり、この方法を使えば既存のオイルサンドから水素を抽出できるほか、主要な油田でも石油の代わりに水素を生産できるという。この工程はスペイン・バルセロナで23日まで開かれている地球化学のゴールドシュミット国際会議で発表される予定で、地下資源の環境保護的利用を研究するプロトン・テクノロジーズ(Proton Technologies、カナダ)が商業化する。

 油田には、閉鎖された区域でもまだ大量の石油が残っている。新しい方法は、石油貯留層(レザボア)の奥深くに酸素を注入し、気体やコーク(多孔質の固体)といった形で残る炭化水素をその場で酸化(現場燃焼)させることにより、熱を発生させる。必要に応じて無線周波を当ててさらに温度を上昇させ、最終的に酸化温度が500℃を超えると、その熱で近くの炭化水素(および周辺の水分子)が分解する。

 熱分解、ガス改質、水性ガスシフト反応は100年以上にわたって水素の商業生産で使われてきた工程だが、新手法では酸素の注入と外部からの加熱のタイミングおよびパターンによってこれらの工程を制御する。

 油田では、プロトンの特許技術「ハイジェネレーター(Hygenerator)」を使って水素を抽出する。ハイジェネレーターは、油田内のフィードバックを利用して水素の場所を見つける装置で、内部の膜が気体をろ過し、ポンプで純粋な水素ガスを坑口までくみ上げる。この技術は地中に炭素を残したまま大量の水素を取り出すことができ、商業生産段階では、既存のインフラと流通チェーンを使って1キロ当たり10〜50セントのコストで水素を生産できる見込みで、同等のガソリンより大幅に安くなるという。

 現在の水素生産コストは1キロ約2ドル。生産された水素の約5%は酸素生産工場の動力源になり、このシステムは十分採算が取れる見通しだという。