Tuesday, February 08, 2022 2:20 AM

メタヴァースの産業用途に大きな可能性

 メタヴァースを業務用に活用する可能性が急拡大しつつある。

 メタヴァース(metaverse)とは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間で、複数の利用者らがそれぞれの分身(アヴァター)を使って自由に行動できる仮想社会の世界。

 人工知能技術を開発するユニティ(Unity)のダニー・ラング氏がベンチャービート誌に寄稿した広告記事によると、メタヴァースは2021年にもっとも話題になった主題の一つだ。新型コロナウイルス・パンデミックによってさまざまの物事がオンラインに移行したのを受けて、没入型の仮想世界というメタヴァースの機能性が多くの人の想像をかきたてた。

 これまでのところ、メタヴァースにまつわる話題はおおむねソーシャル・メディアの延長線上にあり、社交や人とのつながりに主眼を置いている。しかし、それを事業目的に活用する方法もすでに検討されている。

 たとえば、物理的に何かを構築または建造する前に、メタヴァースで体験を模擬化するという活用法が想定される。その用途は、建物や機械、自動車、飛行機とかぎりなく広がる。

 メタヴァースの活用を検討している大手の一つがボーイングだ。「飛行機や製造システムのデジタル・ツインを構築して、そこで模擬化する」という戦略を同社は考えている。デジタル・ツイン(digital twin)とは、物理的事象をデジタル環境で模擬的に再現することを意味する概念。

 ボーイングによると、品質問題の70%以上は設計の問題に起因する。複雑な製品であり、設計に携わる技師の専門領域が多岐にわたり、地理的に離れた場所にいる場合もあることから、その専門性を仮想世界にまとめられれば業務の流れを改善できる可能性が大きい。

 メタヴァースではデジタル・ツインが重要な役割りを果たすことは間違いないが、メタヴァースの価値は、仮想模擬化と現実世界を融合させられる点にある。ボーイングは最近、ユニティと協力して、飛行機の検査や整備の未来について考察した。

 現時点でボーイングが検討しているのは、タブレットやヘッドセットで拡張現実(AR)技術を活用して、機体の過去の状況と現在の状況を比較するといった方法だ。ボーイングはそのための機械学習アルゴリズムをすでに開発したが、期待したほどの効果がなかったため、ユニティの機械視認(コンピュータ・ヴィジョン)を活用してデジタル・ツインを構築しようとしている。

 5G通信やモノのインターネット(IoT)と組み合わさった高度の仮想模擬化環境は、現実の世界を向上させることができる、とラング氏は論じている。

https://venturebeat.com/2022/01/26/the-industrial-metaverse-where-simulation-and-reality-meet/