Friday, May 27, 2022 7:02 AM

医薬品の製造工程でもデジタル・ツインの活用が始まる

 医薬品の製造工程の仮想模擬化を目的としたデジタル・ツインが、今後の成長分野と目されている。デジタル・ツイン(digital twin)とは、物理的事象をデジタル環境で模擬的に再現することを意味する概念。

 ベンチャービート誌によると、製薬会社らは昨今、デジタル・ツインを使った製造工程の最適化への関心を強めている。コンサルティングおよび調査会社のABIリサーチ(ABI Research)では、デジタル・ツインを含むデータ分析ツールに対する医薬品業界の支出額が向こう7年間で27%成長し、2030年に12億ドルに達すると予想する。

 同市場に最近進出したトロント拠点の新興企業ベイストゥー(Basetwo)は、デジタル・ツインを使ったデータ分析のための人工知能プラットフォームをサース(SaaS=software-as-a-service)製品として提供している。さまざまの筋書きをノー=コードで設定して模擬化し、多種多様のデータ・ポイントの相関関係を調べることができる製品だ。同社は、380万ドルのシード・ラウンドの資金調達を始めたことを5月26日に発表したばかり。

 製薬業界の製造工程では、バイオリアクターを使って有効成分を生産したうえで、それを最終製品に使う。化学品を分離するカラムクロマトグラフィーといった機械は非常に高価なため、不使用時間が長いほど工場はコスト効果を下げることになる。そのため、デジタル・ツインを使って操業上の問題を把握できれば、コスト効果を向上できる。

 ベイストゥーのプラットフォームは、バイオリアクターを含む各種の機器がその後の工程で使われる濾過システムといったツール群とどのように連動できるかを模擬化するといった目的にも使える。

 同プラットフォームは、製薬業界のために開発されたが、化学品や食品&飲料、消費財といったほかの業界に応用可能だ。

 アトス=シーメンス(Atos-Siemens)やダッソー・システムズ(Dassault Systemes)のような大企業も、同様のデジタル・ツインのプラットフォームやソフトウェアを開発している。

https://venturebeat.com/2022/05/26/bringing-digital-twins-to-boost-pharmaceutical-manufacturing/