Wednesday, July 20, 2022 6:51 AM

運輸当局、EVの警告音を選択可能にする案を廃止

 運輸省道路交通安全局(NHTSA)はこのほど、EVなどの「静かな車」にメーカーが多様な接近警告音を追加できるようにする2019年提出の法案を廃止した。

 EV、HVなど電気モーターで走る車は、内燃エンジン車に比べて走行時の騒音が低く、特に低速時は歩行者や自転車、視覚障害者にとって車の接近が分かりにくい。

 ロイター通信によると、連邦議会が導入を義務付け、NHTSAがまとめた接近警告音に関する規則では、自動車メーカーは交通弱者の事故被害を防ぐため、HVとEVは時速30キロ以下の速度で走る時に接近を警告する音が出る仕組みにしなければならない。NHTSAは19年、メーカーが複数の警告音を用意してドライバーが選べるようにする案を発表していた。

 同局は今回、提案は「静かな車のドライバーの一部だけが魅力を感じる分かりにくい音作りを許してしまう」ことを理由に「採用されることはない」と説明した。

 テスラは2月、同社の「ブームボックス(Boombox)」機能で再生される大音量の音楽やその他の音によって歩行者が車の接近を感知しにくくなる恐れがあるとして、57万8607台のリコール(回収・無償修理)を発表した。ブームボックスは走行中に外部スピーカーから音を出せる機能で、義務付けられた歩行者警告システムの音を打ち消してしまう可能性があるという。

 NHTSAは過去の予測で、警告音によって負傷者数は20年までに年間2400人減少し、自動車メーカーには警告音を出す防水の外部スピーカーの搭載費用として年間約4000万ドルのコストが発生すると見込んでいた。負傷者の減少が社会にもたらす利益を金額に換算すると年間2億5000-3億2000万ドルになるという。

 同局は、HVが歩行者と衝突する確率はガソリン車より19%高いと推定している。21年の歩行者の死者数は前年比13%増の7342人で、1981年以来最悪だった。自転車に乗った人の死者数も5%増の985人で、1975年以来最悪だった。