Friday, October 21, 2022 10:10 AM

中国の正極材生産シェア、30年には87%に

 世界の電池正極材生産における中国のシェアは、2022年の78%から30年には87%に拡大するという予測を、ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスが発表した。

 グリーンカー・コングレスによると、中国の正極材活物質生産量は18〜22年に4倍以上に増加したが、30年までにさらに5.3倍増えるとベンチマークは予測する。他国も生産能力の開発に取り組んでいるが、同時期の成長率は2.8倍にとどまるという。

 中国が差を広げると考えられる理由の一つは、大規模な正極材生産プロジェクトが急増しているため。中国の上位メーカー4社を合わせると、22年に140万トン超の追加生産能力が計画中または建設中となっている。計画中/建設中の生産能力の大部分は、まだEV市場に供給していないティア3メーカーの設備で、この階層は現在中国の正極材生産量の25%近くを占めるが、30年には50%近くまで増える見通し。

 中国以外の市場にも供給できるティア1正極材メーカーは成長が最も遅く、同階層のシェアは22年の66%から30年には43%に縮小すると見込まれる。

 メーカーの階層によって、製造する正極材の種類は異なる傾向が強い。ティア3の場合、30年に中国におけるLFP(リン酸鉄リチウム)正極材生産の56%を占めると見られるが、国外での需要が高いNCM(三元系)811正極材のシェアは16%にとどまる見通し。中国ではLFPを中心に市場が成長しており、同国の正極材生産に占めるLFPの比率は22年の44%から30年には69%に拡大し、世界のLFPの98%を中国が生産すると予想される。

 LFPは安全性が高いため、エネルギー貯蔵用として魅力が強い。中国のティア3が生産するLFP正極材の多くは中国で補助電源システムを増強している通信会社に供給される予定だという。

 一方、NCM正極材生産における中国のシェアは22〜30年に39%から22%に低下する見通し。

 中国のEV需要は、北米や欧州のような航続距離不安の影響が少なく、NCMのような高エネルギー正極材の需要は弱い。LFP需要の急上昇を受けて、中国では最近、LFP生産に使える廃硫酸と硫酸鉄を生成する二酸化チタン(TiO2)産業が注目されており、5つのTiO2製造業者がLFPの生産能力を開発する大規模な計画を発表している。