Friday, August 25, 2023 11:57 AM

人工知能が海運業の安全性向上に寄与

 昨今における人工知能技術の進歩によって海運業の安全確認業務に大きな革新がもたらされている。

 海運会社P&Oマリタイム・ロジスティクス(P&O Maritime Logistics)の衛生・安全・環境・品質責任者ベンジャミン・ニール氏は、海運業界ニュース・サイト「シップ・テクノロジー」に自身の見方を寄稿した。

 それによると、同社は年間数百万本というコンテナを世界各地に輸送しており、それらすべてを管理するプラットフォームに人工知能を活用している。人工知能の進歩は、業務効率化と年間取り扱い量の増加に寄与してきたが、最近ではさらに、チャットGPTが乗組員たちの安全性向上に直接寄与するようになった、と同氏は報告した。

 生成人工知能を安全性改善ツールとして使うには、満たさなければならない条件がいくつかある。第一に、世界のどこからでもアクセスでき、多言語に対応していなければならない。また、質問に対して正確かつ合法の答えを返すことも必須だ。いわゆる「幻覚(hallucination)」を起こして誤情報を提示したり、十分なデータがない状態で推測したりすれば、深刻な結果を招きかねない。

 また、データ保護の問題もある。同社が行っている衛生&安全評価は社内の機密情報であり、一般公開されている生成人工知能ツールへのプロンプトに入力すべきものではない。

 ニール氏はそこで、チャットGPTからヒントを得た安全な専用チャットボットを独自に開発した。社内のデータを使って厳密な媒介変数の範囲内で動作し、かつ特定の問い合わせに対して一定の情報でのみ回答するソリューションがそれだ。

 完成した「AISA(AI Safety Assistant)」は、世界中の従業員らがさまざまの言語で使える生成人工知能ツールだ。一地域の業務手順や研修教材に変更があれば、すべての言語に即時反映される。そのため、安全性に関する情報更新が迅速になり、手作業による翻訳の時間と費用も削減できた。

 また、「事故があった」と一従業員が入力すると、AISAが事実確認の作業を開始し、もっとも正確な安全性ガイダンスを提供するための情報を入手する。この種の機能が、危機発生時に従業員たちの命を救う可能性がある、とニール氏は説明している。

 同ツールは現在、3000人の従業員に利用されている。

https://www.ship-technology.com/comment/ai-is-charting-a-new-course-for-maritime-safety/