Wednesday, November 08, 2023 11:54 AM

人工知能同士が契約内容を自律交渉

 人間がまったく介入せずに人工知能が自律的に別の人工知能と契約内容を交渉したという世界初の事例が11月7日にわかった。

 オートパイロット(Autopilot)というその人工知能を開発したのは英国拠点の新興企業ルミナンス(Luminance)だ。同社は、契約内容を分析して変更を加えるための大規模言語モデルを独自に開発した。同社の人工知能アルゴリズムは、弁護士や法務担当者が通常行っている契約関連の書類業務を削減することを目的とする。

 CNBCによると、オートパイロットは、ワード(Word)で契約文書を開く段階から条件交渉、ドキュサイン(DocuSign)に送って署名を求める段階まですべての業務を自律的に実行する、ルミナンスのジェーガー・グルシナ上席本部長は説明した。

 「この人工知能は法務を学習しただけでなく、事業にとって重要なことも理解している」と同氏は話す。

 ルミナンスは、オープンAIのチャットGPTに似た生成人工知能チャットボット「ルミ(Lumi)」も提供しているが、オートパイロットはルミよりもはるかに高度だという。ルミは、弁護士の補佐役として機能し、弁護士の質問に答えるかたちで問題のありそうな契約条項を特定する。オートパイロットはそれに対し、人間の監督を受けずに自律的に動作するほか、すべてのログを記録するため、人間が一連の過程の全段階をいつでも確認できる。

 今回の実演は、機密保持契約書を交渉するという前提で、ルミナンスの顧問弁護士と同社の顧客会社の顧問弁護士が同じ部屋の両側に座って、人工知能による交渉過程をそれぞれの画面で確認できるようにした。問題になりそうな条項をオートパイロットが赤色でハイライトすると、その条項がより適切な内容に変更される様子が観察された。

 変更に際しては、両社が機密保持契約を日ごろからどのように交渉しているかについての理解が生かされたという。たとえば、当初の契約書では契約期間が6年と規定されたが、それはルミナンスの方針に反することから、オートパイロットはそれを認識したうえで3年に変更した。

 チャットGPTやダーリー(Dall-E)、アンスローピックのクロード(Claude)といった生成人工知能ツールは汎用目的であるため、法務に際しては業界特有の学習を済ませたオートパイロットのような特定分野特化型ツールが適している、とグルシナ氏は説明している。

https://www.cnbc.com/2023/11/07/ai-negotiates-legal-contract-without-humans-involved-for-first-time.html