Thursday, March 21, 2024 7:19 AM

アイオン、全固体電池で大きな節目を達成

 メリーランド大学からスピンオフした米電池技術開発会社アイオン・ストレージシステムズ(ION Storage Systems、メリーランド州)は、独自の全固体電池(SSB)技術で、性能を大きく劣化させることなく125回充放電するという重要なマイルストーンに到達した。

 エレクトレックによると、同社のアノードレス(負極不使用)でコンプレッションレス(非圧縮)な全固体電池は、5%未満の性能容量劣化で充放電125サイクル超えを達成した。将来的に1000サイクル超を実現できる可能性があるという。

 全固体電池は、リチウムイオン電池に代わる安全で堅牢な電池と期待されている。アイオンの電池は、グラファイト(黒鉛)のような従来の負極材を使わず独自の3次元セラミック構造を採用。これで保護具や冷却が不要となり、電池の安全性が高まるだけでなく、大規模な量産が簡単かつ安価になる。

 アイオンは、電気自動車(EV)や長時間のエネルギー貯蔵といった市場に参入する前に、まず米軍に技術を売り込んでおり、テストや開発を国防総省と共同で進めている。同社の全固体電池は、エネルギー省自動車技術局の急速充電目標を室温で達成した唯一のコンプレッションレス全固体電池技術となっている。

 アイオンは23年9月、多国籍企業サンゴバン・セラミックスとセラミックス粉末の複数年供給契約を締結し、アノードレス・コンプレッションレス固体電池事業の規模を拡大する体制を整えている。