Wednesday, June 13, 2018 11:08 AM
神経回路網をチップ上に実現し電力効率を100倍に
IBMは、神経回路網をシリコン上に直接組み込むチップによってエネルギー効率が100倍向上することを実証した。
神経回路網は一般に、ソフトウェアとして構築され、コンピュータ・チップで走らされる。効率改善の余地がそこにあるという仮設が実証されたかっこうだ。
神経回路網とは、脳内のニューロン(神経細胞)をつなぐシナプスを模倣する数学モデルだ。シナプスの接合が調整されることで回路網は学習していく。人間の脳であれば、何かを学習するとシナプスが成長し、また使わなければ時間とともにシナプスが衰えていくこともある。
シナプスのそういった性質をソフトウェアで模倣することは比較的容易だが、ハードウェアで模倣することはこれまで困難だった。
テクノロジー・レヴュー誌によると、IBMは、神経科学の知識を応用して、短期的なシナプスと長期的なシナプスという二つのタイプを活用した。前者は計算、後者は記憶を目的としている。それによって、人工神経回路網をシリコンに構築するうえでの課題の一つだった精度を向上させることができた。
IBMでは、手描きの画像と色つきの画像を使って単純な認識の実験を実施した結果、ソフトウェアの神経回路網とほぼ同じ精度でありながら、チップの使用電力をわずか100分の1に減らせるという成果をあげた。
同研究は、人工知能の進歩に大きく寄与する可能性がある一方で、さらなる研究の余地もある。
IBMのチップは、トランジスタ5個とほかの部品3個で構成されている。通常のチップであればトランジスタは1個だ。また、これまでは模擬化でのみ試験されているが、今後、完全なチップを製作して試験する必要もある。
IBMの研究成果は、専門誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。