Thursday, August 25, 2016 10:00 AM

シカゴの予想防犯システムに効果なし〜データ解析の設計や運用に改善の余地

 ハリウッド映画「マイノリティー・リポート」(2002年、監督スティーブン・スピルバーグ、主演トム・クルーズ)で描写された防犯技術(予知能力を持つ3人の予知力を映像化して、犯罪が起きる前に犯人を逮捕する)のような対策がシカゴで試験的に実施されたが、好結果は出なかった。

 フォーチュン誌によると、シカゴ市警は、犯罪者を犯罪後に発見するのではなく犯罪を予想することで治安を維持する防犯体制を試みたが、少なくともその初期段階では失敗に終わった。

 シカゴ市警は、銃犯罪の被害者になる可能性の高い個人の特定を可能にするために、データ分析を使ったストラテジック・サブジェクト(Strategic Subjects)という防犯対策を2013年に立ち上げた。

 場所や時間帯、武器の種類、犯行の手口といった銃犯罪の傾向や状況、被害者や容疑者に関する情報を含むありとあらゆるデータを解析して、銃犯罪に巻き込まれる可能性の高い個人を割り出すというのが狙いだった。

 当初の体制では、銃犯罪に巻き込まれる前に、被害の危険に直面する可能性が高いと特定される個人に担当者らが接触して事件を防ぐというものだった。

 しかし、ランド・コーポレーション(RAND Corporation)のジェシカ・サンダース犯罪学者が行った調査によると、シカゴ市警の試みは、危険に直面する個人が関与した事件が起きたあとの被害者または容疑者を特定するにとどまったことが判明した。

 実際には、特定された個人らは、犯罪に巻き込まれる可能性が特別に高いわけではなく、それどころか、違法銃所持やそのたぐいが理由で検挙される可能性のほうが高いという結果も出た。一部の専門家は、「データ解析を駆使した指名手配リストの作成を迅速化した」と皮肉った。

 ストラテジック・サブジェクトは、銃犯罪の可能性に焦点を合わせてデータ解析を応用することから、犯罪に巻き込まれる危険に直面したそういった個人の大部分は、合法か違法にかかわらず銃を持っている場合がほとんどで、そのなかの銃違法所持が摘発されるというのが実態で、当初の狙いからはほど遠い結果となった。

 ただ、そういった個人が将来に起こすかもしれない銃犯罪を防いだという皮肉な可能性もあるといえる。

http://fortune.com/2016/08/21/predictive-policing-chicago/