Tuesday, August 29, 2023 3:38 AM

最高裁判決がIT労働力の多様性の足かせに

 連邦最高裁は、非白人を優遇する少数派人種差別是正措置(affirmative action)を大学入学選考の際に適用することが「法のもとの平等」の基本理念に反する、という違憲判断を6月にくだした。米国内各社のIT責任者らはそれを受けて、「IT人材の多様化(非白人や女性の雇用数を増やす取り組み)を目指す会社らの努力を萎縮させる可能性がある」と懸念している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、各社の最高情報責任者(CIO)らは、今回の判決によって多種多様の卒業生たちが就職市場に参入する構造に変化が起き、既存の雇用や昇進慣行に課題をもたらすおそれがあるとみている。

 さらに、それに追い討ちをかけるように、共和党の州司法長官らは、今回の最高裁判決を引き合いに出して、雇用や昇進、契約においても人種にもとづく優遇を行わないよう、全米の大企業らに警告する書簡を公表した。

 過去10年間、特にここ数年は、多くのCIOが非白人や女性の従業員数を増やすための措置の制定や強化に留意してきたが、その進展は遅い。技術業界団体コンプTIA(CompTIA)の分析では、2022年に米労働者に占める黒人の割り合いは12%だったが、IT職では8%にとどまり、中南米系も全米の17%に対してIT分野では約8%だった。2022年の国勢調査では、黒人は米人口の13.6%、ラテン系は19.1%を占めている。技術分野での非白人率が不釣り合いに低いことがわかる。

 また、IT分野では、黒人のCIOまたはIT責任者は6%、ラテン系は8%にとどまる。

 ソフトウェア会社フレッシュワークス(Freshworks、カリフォルニア州拠点)のプラサド・ラマクリシュナンCIOは、「多くの会社や最高幹部らが多様性を受け入れているが、多様性を積極的に受け入れる措置や策を維持しなければ、将来の労働力に影響がおよぶ」と指摘する。また、多様化策を維持する会社らは、なぜ維持するのかを投資家たちに説明する必要に迫られる可能性も出てくる。

 技術人材サービス会社テックシステムス(TEKsystems、メリーランド州拠点)のフランクリン・リード氏によると、多様化策が従業員定着率や労使関係、売り上げに貢献しないことを理由に、DEI(Diversity, Equity, and Inclusion=多様性、公平性、包括性)の取り組みを後退させている会社もある。

 一部の会社では、DEI推進策に対して従業員たちからの反発にあっているため、昨今の景気減速懸念ともあいまって、DEIへの投資を減らしている会社も出始めている。

https://www.wsj.com/articles/cio-affirmative-action-ruling-could-set-back-progress-in-tech-diversity-359adeea?