Tuesday, March 21, 2017 10:38 AM

国内インフラ評価は「D+」〜土木学会が「成績表」更新

 国内のインフラ整備状態を4年ごとに評価している米国土木学会(ASCE)が発表した最新の「インフラ成績表(Infrastructure Report Card)」は、「D+」(標準以下)という悪い内容となった。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、ASCEは最新評価で、向こう10年間に道路、橋、公立学校、港などを安全で正常に機能するレベルに引き上げるには政府と民間合わせて約4兆5900億ドルの予算が必要と指摘した。これは現行水準を約2兆640億ドル上回る。インフラ投資が国内総生産(GDP)に占める割合は、現在の約2.5%から2025年までに3.5%に引き上げるべきだという。

 インフラの老朽化は全米で問題になっており、ミシガン州フリントでは水道管の腐食で水道の水が高濃度の鉛に汚染されたほか、各地の港湾は貨物の取扱量を増やせず、カリフォルニアでは大雨でオロヴィル・ダム決壊の懸念が高まり、約20万人が避難を強いられた。

 ASCEが評価した16分野の中には、4年前より状況が悪化している分野と少し改善している分野があった。今回最低の「D-」評価を受けた分野はトランジット(公共交通)で、整備の遅れや慢性的な予算不足によりシステムを正常に機能させるには900億ドル分の作業が必要と指摘された。

 ボストン地区の公共交通支援団体アソシエーション・フォー・コミューター・トランスポーテーションのデイビッド・ストラウス氏は「連邦予算と官民の連携拡大が重要」と話す。一方で都市鉄道のような大規模プロジェクトは資金の無駄という批判もあり、ヒューストンのセンター・フォー・オポチュニティ・アーバニズムのウェンデル・コックス上級研究員は「ただインフラに金をつぎ込めばいいというものではないが、残念ながらトランジットに関してはそうなっている」と指摘した。「この数十年、高速鉄道の拡大に多額が投じられたが、車で通勤する人の数は減っていない」からだという。

 最新評価は「10年以内にインフラをキャパシティ問題やリスクが少ない安全で信頼できるランク『B』に引き上げるには、全ての分野で予算を大幅に拡大する必要がある」と指摘した。今回「B」評価を受けた分野は鉄道のみ。前回、今回ともに「A」と評価された分野はない。