Thursday, December 01, 2022 6:01 AM

ロールス・ロイス、水素燃料の航空機エンジン試験に成功

 英工業大手ロールス・ロイス(Rolls-Royce)は28日、航空業界では初めて水素燃料の航空機エンジンの実証試験に成功したと発表した。水素が業界の脱炭素化のカギとなり得ることを証明する大きな一歩だと強調している。

 ロイター通信によると、同社は英格安航空会社(LCC)大手イージージェットと共同で、改造した地域航空向けのロールス・ロイス製エンジン「AE 2100-A」を用いて地上試験を行った。燃料には風力と潮力発電で作られたグリーン水素を使った。両社は、水素が安全かつ効率的に民間航空機エンジンに電力を供給できることを証明しようとしており、すでに2回目の試験を計画している。長期的には飛行試験を目指す。

 航空業界は、2050年までにネット・ゼロ(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)達成を目指しており、水素燃料はそのためのいくつかの技術の一つ。欧州航空機大手エアバスも、仏米系のエンジンメーカーであるCFMインターナショナルと協力して水素推進技術の試験を行っている。

 エアバスは2月、超大型機「A380」の試験機に特別改良された現行世代のエンジンを搭載する計画を発表したが、21年には欧州連合(EU)に「少なくとも50年まではほとんどの旅客機が従来のジェットエンジンに依存することになるだろう」と述べている。

 水素エンジンへの切り替えには、機体や空港インフラの抜本的な設計見直しが必要になる。仏SHZコンサルティングのエリック・シュルツCEOは「設計の変更は非常に大規模なものとなるため、実現までには1世代以上の航空機の使用期間を要する」と見ている。

 ロールス・ロイスなどが支援する技術にはほかに、当初は短距離飛行向けと考えられる電動エンジンや、持続可能な航空燃料(SAF)がある。SAFと従来品の混合燃料が使えるエンジンはすでに実用化されているが、生産量はまだわずかでしかない。いずれは大気中の二酸化炭素(CO2)とグリーン水素を合成して燃料を作れる可能性があるが、この工程はエネルギーを大量に消費し、まだ大規模な使用には向かない。